韓玉青:アートセラピー
韓玉青は、フランスのディオールやシャネル、イタリアのブルガリ、イギリスのバーバリーなど、世界的なブランドの指名を受けてVIPのためのカードに美しい文字を書いている。一点一画、ゆっくりと文字を書いていくことは、韓玉青にとって喜びであり、最も楽しいことだ。
祖父も父も書道家である。祖父は基礎の大切さを説き、韓玉青は幼い頃から鉄の棒をつけた毛筆を持たされ鍛錬してきた。幼い頃から、家での春節のイベントと言えば書初めだった。新聞紙を広げ、祖父と孫が競うように筆を振るった。
イギリス留学から帰国すると、実践大学でデザインを教え始めたが、学生たちが書体を知らないことに気付き、万年筆や羽ペンを使って文字を手書きする授業を行ない、文字の美しさに触れさせた。その後「日日好文創」を設立し、大人や子供に美しい文字の書き方を教え始めた。
どの書体にも、矯正と癒しの効果があると韓玉青は言う。例えば漢字の楷書は、線による構図が厳格で、学習者は細部に注意を払い、繊細でなければならない。行書はスピードを重視し、筆運びが異なるため、肘の力を抜く必要がある。身体は文字を書く時の安定感を記憶することとなり、書体によって異なるリズム感は筋肉に正しい記憶を植え付ける。これが韓玉青が新たに考案した書の教育方法である。
「弘法筆を選ばず」と言うが、学習者が早く上達できるよう、韓玉青はさまざまな書体に適した毛筆やペンを開発する。ゴルファーが状況によってクラブを変えるように、行書や楷書、隷書、ゴシック体など、書く文字によってふさわしい筆やペンも異なるということだ。
では書の基礎訓練とは何だろう。「直線を書くことです」と彼は一言で言い切る。筆やペン以外に何も使わずに10センチの直線を1ミリ間隔で書くことで、手の力加減とコントロールする力を訓練できるという。直線が書けるようになってはじめて文字が正しく書けるのだと言う。
手書き文字の普及に力を注ぐ韓玉青は、現代社会において、手で字を書くことには「アートセラピー」という重要な意義があると言う。「字を書くことは総合芸術です。その人の精神の質と関わってきます」と言う。彼の観察では、多くの人に必要なのは文字を美しく書くことではなく、美しく書こうとする過程において、精神的に解放され自由になることだと言う。特に親子で一緒に字を書くことを彼は勧める。ともに美意識を育めるだけでなく、心を落ち着けて美を観賞することで、たくさんのものが得られるのである。
手で文字を書くことは、古い時代の価値であり習慣だが、大切な思いは手書きの文字を通してこそ伝わる。重要な記憶も手で書くことで永遠にとどめることができる。
長いこと、ペンや筆を手に取っていないのではないだろうか。時間を作り、ゆっくりと文字を書いてみてはいかがだろう。
万年筆はハイテク製品ではないが、製造工程で必要な多くの技術と経験は台湾産業の強みでもある。
かつてのペンのOEM生産の経験を活かし、王成昌は万年筆市場に進出して大きな成功を収めた。
高い品質を持つ万年筆は、どれも握りやすく書き心地が良い。
文字を書く一人の時間を楽しむ鍾佳玲。心を落ち着け、自分と向き合う大切な時間である。
植物の図案と組み合わせた鍾佳玲独自のカリグラフィー。マニキュアで色味を添えている。
鍾佳玲はフェイスブックの「筆尖温度」に作品を発表するだけでなく、教室を開いてカリグラフィーの方法と楽しみ方を教えている。
世界に知られるカリグラファーの韓玉青。彼にとって字を書くことは喜びに満ちた大切な時間だ。(荘坤儒撮影)
現代社会において、手で文字を書くことには「アートセラピー」という重要な意義がある。
カリグラフィーと絵画を融合させた韓玉青の作品。数々の有名ブランドがVIPに送る書簡の手書きを彼に依頼している。