台湾ならではの味
食材を強火で一気に炒めた料理「快炒」が、近年は台湾を訪れる観光客にとって必ず味わってみたい料理となっている。快炒店と言えば台湾人が思い浮かべるのは、スチール製の丸い腰掛け、カセットコンロに載った鍋料理、アルコールバーナーで温められた蒸し魚、にぎやかに飲み食いする客の声などだろう。これらは「Chao炒炒新亜洲蔬食」にもそろっている。ただ異なるのは肉も魚もないことだ。
台北で開いた菜食レストラン「BaganHood」が人気店となった後、未来餐飲グループ創設者の李沛潔さんと呉栄峰さんは次に快炒店を開こうと考えた。それは、深夜まで忙しく働いた後に二人が寄れるような菜食快炒店がなかったからだ。
「人々に愛される馴染み深い快炒の味とは、実は料理それぞれで組み合わされた調味料の味なのです」と呉さんは言う。料理名にはよく「沙茶」「宮保」「糖醋」といった語が含まれるが、それらにはそれぞれ対応するソースの香りや味があり、台湾人の日常の味の記憶と深く結びついている。だから「馴染みあるその味が出せれば、満足できる料理になるのです」と李さんも言う。
「Chao」のメニューを開くと、「鳳梨蝦球(パイナップル入りエビマヨ)」「沙茶牛肉(牛肉の沙茶ソース炒め)」「宮保鶏丁(鶏肉とピーナッツの唐辛子炒め)」など、一般の快炒店でも見慣れた料理名が1ページに30ほど並ぶ。
ただ「鳳梨蝦球」でマヨネーズにくるまれているのはエビではなく、プリッとした歯ごたえのコンニャク、「沙茶牛肉」や「宮保鶏丁」の牛肉や鶏肉も植物由来の肉だ。最新の加工食品を活用することで、模倣のおもしろさを新たな高みに引き上げ、新境地に達している。
肉は本当に必要か、「Chao」に行けばわかるだろう。

強火で一気に炒めて作る味わいはまさに中華料理そのもので、ベジタリアン料理だと感じないほどだ。