実験で繁殖条件を発見
観賞魚の人工繁殖に関する情報は少なく、繁殖や産卵回数を増加させ、繁殖技術を開発して稚魚を大量生産するには、水産試験所がこれまで蓄積してきたノウハウが鍵になった。
まず、雄雌の交配には静かな環境を用意し、イソギンチャクやサンゴ礁を置く。「クマノミは種類により共生するイソギンチャクが決まっていて、ハタゴイソギンチャク、シライトイソギンチャク、センジュイソギンチャクの3種ですが、1種のイソギンチャクとしか共生しないものもいます」と言う。
次いで、クマノミは敏感で縄張り意識が強く、気に入らないと縄張り争いを始め、つがいになるとは限らない。そこで成功する環境を開発し、水槽一つにクマノミのつがいを一組に限り、交配の確立を高めた。
また産室の水温や水質も重要である。研究スタッフは二組のクマノミで条件を変えて試験を繰り返した。酸性度や亜硝酸、アンモニア濃度などを管理しながら、ハロゲンランプ20,000ルクスで9〜12時間光を当て、水温は26〜28度、塩分濃度は3.3%〜3.5%が産卵に適していることが分った。
さらに、クマノミは最初の産卵前に兆候が現れることも観察された。繁殖第一世代のメスはイソギンチャクが付着する岩に産卵し、産卵前には産床の堆積物や藻を口で掃除し、尾で小石を払う。そんな動作が産卵まで2、3日続く。二回目になると、産卵場所が決まっているので、この動作は産卵直前の2〜3時間に見られるだけとなる。
これまでの海水魚繁殖の経験と観察から、東部センターでは半年で繁殖の条件を見つけ出すことができ、クマノミの産卵回数を年数回から20回余りに増加させることができた。
孵化から60日、体長2センチほどに育つと販売が可能になる。