高価な外国産スイカがヒントに
もう一つ、市場での差別化に成功したのは、再び世に出た「黒皮」のスイカである。
かつて皮の黒いスイカは台湾では売れなかった。神仏へお供する時に、伝統的に黒い果物は使われないからかもしれない。
しかし、南部の高級スーパーで日本から輸入した黒皮のスイカを売り出したところ、1個が1800台湾ドルと非常に高価で、この価格は市場関係者を驚かせた。
黒皮のスイカは、お供えや贈答品にしなくてもいいではないか。
「ブランド」として差別化を図りたいと考えていた陳威廷さんは、黒皮スイカの最大の魅力は、黒に近い深緑色の皮にあると考えている。市場で目にすれば消費者はすぐに識別できるからだ。そこで農友種苗では客層に合わせて果肉の色味が異なる3種の黒皮スイカを開発した。共通点はいずれもジューシーで甘いということだ。
外皮が黒みがかった濃い緑色で、果肉が赤い「雅君(Skylar)」という品種は露地栽培でき、三期作が可能で生産量が多い。「雅君」は一般大衆をターゲットとしており、重さは3~4キロ、糖度が高く、会食やレストランでの提供にふさわしい。
同じく黒みがかった濃い緑色の皮をしているが、果肉がオレンジ色の「黒蘭(Helen)」という品種は、外皮に縞模様があるが、地の色が黒いため縞模様は目立たない。黒蘭の最大の特色は肉質がサクサクしていることで、皮は硬い。研究スタッフによると、この品種は保存がきき、冷蔵庫に3週間ほど入れておいても、肉質は変わらないという。近隣の東南アジア諸国に輸送しても貯蔵可能な期間内に届くため、輸出品種としてのポテンシャルが高い。

糖度が高く、一般市場向けの「雅君(Skylar)」。