世界を行き交い、リスクを分散
一方、薛長興工業(SHEICOグループ)がカンボジアに工場を設けたのは、深圳の労働者の間でサボタージュが広がったからである。
そこで2008年、総経理の薛敏誠は急いでカンボジアに工場を設けた。深圳のサボタージュは深刻化していた。2000人近い工場を閉鎖するわけにもいかないし、受注は増えており、工場の生産量は大きな影響を受けていた。そこでカンボジアとベトナムの国境近くに工場を設立することにした。そこはベトナムのホーチミンに近く、原材料と製品の輸出入に便利だからである。
2008年、SHEICOグループは一面の荒れ野原に4ヶ月をかけて工場を完成させ、従業員300人からスタートした。今では工場は10棟以上、従業員は4000人を超える。
しかし2013年、カンボジアで多数結成された野党が、労働組合にストライキを働きかけた。ストライキは各地に広がっていき、SHEICOグループに影響が及んだのは最後だったが、道路封鎖で従業員が通勤できないなどの問題が生じ、カンボジア第一工場は10日にわたって閉鎖せざるを得なかった。これによって出荷も遅れた。欧米の顧客は理解を示してくれたが、SHEICOグループとしては2008年の深&`工場のように大規模なストライキが発生するのを心配し、リスクを分散するために、プノンペンの空港に近いエリアにカンボジア「第二工場」を建設することにした。
SHEICOグループはウォーター・スポーツウエアを生産している。サーフィンやヨット、スイミングからダイビングまで、あらゆる製品が揃っており、世界市場の6〜7割という高いシェアを誇る。董事長の薛丕拱は1965年に長興工業を設立してレインコートや雨靴を生産していたが、1968年に社名を現在の薛長興工業に変え、2018年で創設50周年を迎える。労働力と工場設立コストの安さを求めて、同社は30年前から海外に工場を設立し始め、すでに管理制度が整っている。
プノンペンにある第二工場を訪ねると、工場エリアは3つに分かれ、それぞれスノーケリングベスト、ダイビング用スーツ、そして多品種少量生産のカスタマイズ・スポーツウエアや素材を生産しており、生産量は月20万点を超える。
台湾の銀行として初めてカンボジアに進出した第一商業銀行。