林華慶——教育の場から行政部門へ
ここ数年、林務局は従来とは違う輝きを放っているが、その立役者として一番に挙げられるのは林華慶‧林務局局長であろう。
接客室で初めて会った林華慶に官僚のイメージはなく、非常にオープンな印象だ。
まず聞きたいのは、一連の改革のきっかけである。「これまで政府は一方通行の宣伝を行なってきましたが、これでは現在の国民を満足させられません。ネットが発達した現在、国民が得られる情報量は多く、人々はさまざまな意見を持っていて、それは政府より劣るとは限りませんから、国民に政策を受け入れていただくには、もっと工夫が必要です」と言う。
局長に就任して4年の間に、林務局はすでに多くの印象的な行動を打ち出してきた。しゃれたデザインのカレンダーや手帳、市販の書籍に負けないレベルの出版物、里山動物列車など、デザイン業界からも「公的部門の美学をくつがえした」と評価されている。だが、林華慶が重視するのは「双方向のコミュニケーション」である。
かつて政府部門と言えば、国民感情とは遠いところにあり、一方的に政策を決めて予算を浪費し、しかも成果は上がらないと批判されることが多かった。それをどう解決するか。「政策決定のプロセスで、一般市民と公式‧非公式の対話を行ない、さまざまな視点からの意見を取り入れることです」と林華慶は言う。
では、これまでと異なる手法はどこから出てきたのか。それは林華慶の経歴と関係するかもしれない。林務局長に着任する前、彼は台北市立動物園や台湾博物館に勤務していたのである。行政機関である林務局と違い、これらの部門は研究機関であり、教育の場でもある。
動物園の場合、世界には動物園の存在自体に反対する人々がいるが、「こうした人々を説得するには、少数の動物の自由を犠牲にして最大の価値を発揮できることを説明する必要があります。その価値とは、動物の保全と市民教育です」と林華慶は言う。そのために、さまざまな手段を通して一般市民と交流する必要がある。
林華慶は動物園在任中、動物部門の長と広報を担当していた。その間にゾウの林旺と馬蘭が世を去り、コウテイペンギンの卵が孵るといった大きな出来事があったが、彼は常に平常心でメディアの取材に対応した。
林務局長に就任する前は台湾博物館の副館長を務めていた。台湾で最も長い歴史を持つ博物館で、時代に淘汰されないよう宣伝を重視し、情報公開の時代に対応し、従来は博物館に足を運ばなかった層を開拓した。
一般市民とのコミュニケーションに長けた林華慶・林務局長は、林務局を新たな時代へと導いている。