中医学と西洋医学の統合
コロナ禍の中、台湾では新型コロナウイルス感染症の症状を改善する「清冠一号」という中医薬が開発され、それが効果があるというので世界中から注目された。台湾では、中医学と西洋医学の統合治療が進められており、それが大きな特色となっている。
中医学と西洋医学の統合治療と言うと、補助的に中医学を用いるというイメージがある。例えば、中医薬によって免疫力を高めて西洋薬の副作用を軽減するといった方法だ。しかし、花蓮慈済病院が推進しているのは中西医融合の精密医療だ。西洋医学の遺伝子検査を行ない、中医薬データバンクを利用して患者に適した中医薬を処方するという方法を台湾で初めて採用している。
香港のある起業家は、パーキンソン病のために身体が思うように動かなくなり、車椅子での生活を余儀なくされ、食事にも介助が必要だった。この患者に対し、慈済病院のチームは遺伝子欠損部分に対応する生薬を見出して処方し、さらに幹細胞療法とリハビリを組み合わせて行ったところ、身体がしだいに動くようになって車椅子から歩行補助器具に変わり、ついにはゴルフ場でプレーできるまでになったのである。
慈済病院は風光明媚で自然環境に恵まれた花蓮にあり、ウェルネスホテルとも協力している。医療ツーリズムで来訪した人々は、こうした環境で十分に心身をいやすことができる。
30年以上にわたって花蓮でオーガニックハーブを栽培してきた君達グループの尹純綢董事長は、看護師として働いた経験があり、予防医学と医食同源の重要性を知っていた。そこでウェルネスをコンセプトとしたホテルを作りたいと考え、花蓮の吉安に秧悦美地リゾートホテルを開いた。敷地内には100種以上のオーガニックハーブが植えられ、ここでは呼吸をするたびにマイナスイオンとフィトンチッドが吸い込めるという。ホテルで用いられる食材は園内や協力している有機農場のもので、ケアの必要な宿泊客には栄養士がカスタマイズしたメニューを提供する。
宿泊客が完全にリラックスできるよう、このホテルでは全室にスチームルームを設け、新鮮なハーブを提供して宿泊客が室内でアロマセラピーができるようにしている。ヨガ教室や健康講座も受講でき、自転車で奇莱山や楓林トレイルの大自然を走ることもできる。尹純綢さんの経営方針は、花蓮慈済病院の林欣栄院長の理念と一致し、双方は昨年MOUを締結、ウェルネスツーリズムのプラットフォームを構築した。
尹純綢さんの努力は多くの外国人を惹きつけている。インドネシアのホテル経営者である劉さんは、末期の肺がんが骨に転移していた。そこで花蓮慈済病院の医療チームと秧悦美地リゾートホテルが共同で計画を立てて治療に当たったところ、期待を裏切ることなく4か月後には転移した腫瘍も除去され、治療に成功したのである。
李啓誠主任によると、花蓮慈済病院では治療のほかに、毎日早朝に慈済精舎で証厳法師の講話が聞ける。英語の字幕もあるため、外国人も生命に思いを寄せる上人の言葉が理解でき、苦痛をいやすことができる。「この生命への想いこそ、慈済病院が追い求めるものです」と言う。
台湾の座禅は西洋医学におけるライフスタイルメディスンと通じるものがあり、心を落ち着かせることで免疫力が高まる。呉明彦執行長は、これも国際医療推進に活かせるリソースだと考えている。高雄市立聯合病院の副院長を務め、『台湾療癒散歩冊(台湾でのヒーリング散歩)』を出した蘇瑞勇医師はこう語っている。台湾では山が近くにあり、日帰りで山と海へ行くこともできる。山で茶を味わって温泉につかるというのは、台湾ならではのヒーリング方法である、と。李啓誠主任もこう話す。――台湾はフレンドリーで、政治経済は安定していて、交通の便も治安も良い。これらはすべて外国人が台湾を医療ツーリズムの目的地に選ぶ条件になるのだ。
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台湾医療健康産業卓越聯盟基金会の呉明彦執行長。ここ数年、台湾の国際医療サービス工程は以前より完備され、マーケティングも進歩したと語る。(林旻萱撮影)
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中医学と西洋医学の統合医療は台湾医療の大きな特色である。中医学は症状を改善できるだけでなく、症状に対応して薬を処方できる。写真は鍼灸治療の様子。(外交部資料写真)
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ベトナムから来たBaoちゃんは台湾で命を取り戻した感動を絵に描いた。この絵は、彼女の病床で医療スタッフが回復を祝っている様子。(花蓮慈済病院提供)
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花蓮慈済病院では中医学と西洋医学を融合した精密医療を推進している。西洋医学の遺伝子検査を行ない、その結果から的を絞った生薬を処方する。(花蓮慈済病院提供)
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秧悦美地リゾートホテルには栄養士もいて、大地にやさしい食材を用いてヘルシーでおいしい食事を提供している。(秧悦美地リゾート提供)
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秧悦美地リゾートホテルにあるハーブの迷路。花蓮でのヒーリングの旅を呼びかけている。(林旻萱撮影)