美しさより重要なこと
優れたデザインによって、授賞式に対する人々の興味は高まったが、クリエイターとしてデザイナーが考えなければならないのは見た目の美しさだけではない。「美しいのは基本に過ぎず、それは目的でも結果でもありません。重要なのは、目的は何かということです」とChadは言う。
つまり、デザインを通してどのような理念を伝え、どんな問題を解決し、どのような結果を出すかである。有形のものの背後のコンセプトや精神の方が大切なのである。
羅申駿は、台湾で最も早くからモーション・グラフィックに携わってきた使命感からか、第25回金曲賞において、クロスオーバーな協力の重要性を伝えることを考えた。ベテランから新鋭まで、モーションからグラフィックまで、世代や分野を超えたデザイナーの協力を促した。さらに、自らが十数年にわたって蓄積してきたノウハウを、これらのクリエイターとシェアしたのである。
彼は、かつての「優良産品評選制度」、現在の「金点設計賞」の授賞式も担当した。賞のロゴデザインから授賞式の流れや、合わせて行なう公演や国際フォーラム、記者会見、さらにはスポンサー探しまで、すべてを企画した。これにより、金点設計賞は「第四金」と呼ばれるようになり、レベルも向上した。
iFデザイン賞やレッド・ドット・デザイン賞に倣って国が設けた、この華人のデザイン賞は、デザイナーが競って目指す栄誉となった。また一般の人々にとっても別の意義がある。Chadによると金点賞は、国が受賞作品を通して国民に良い設計とは何かを教えてくれる存在なのである。
こうして見てくると、授賞式はデザイナーが創意を発揮する舞台であるだけでなく、社会が参画するチャネルであるともいえる。だが、興味深いことに、これら授賞式を成功させたベテランたちは、その座に留まろうとしていない。
「私たちはすでにやったのですから、次は他のデザイナーにやってもらえばいいのです。私たちが興味を持つのは、できるか否かではなく、デザインの可能性です。重要なのは、出来が良いかどうかではなく、何を表現するかです。それが表現できていれば、良いデザインと言えます」と羅申駿は締めくくった。
第29回金曲賞のすばらしい演出は、緊密な統合によってデザインを新たな高みへ導いたことで実現した。
顔伯駿は顔写真のコラージュを第29回金曲賞のメインビジュアルとし、分衆の時代の到来を表現した。
顔伯駿は顔写真のコラージュを第29回金曲賞のメインビジュアルとし、分衆の時代の到来を表現した。
ファッション写真のような第28回金曲賞のビジュアル。流行音楽産業の舞台裏で働く人々に光を当てた。(三頁文設計提供◎文化部)
羅申駿は金曲賞プロジェクトを実施するたびに、デザイン産業や台湾に対する関心をテーマとしてきた。(林旻萱撮影)
ジャンルを越えた討論を無数に重ねることで、見ごたえのある授賞式が演出できる。
デザインをもって金点設計賞を設計賞の名にふさわしいレベルに引き上げた。