神からの優しいお導き
林茂賢さんによると、どの廟でもおみくじを引く手順に大きな差はない。まず線香に火を灯し、神の前に立って自分の姓名と住所、お伺いしたい事柄を唱え、神のお許しを得てからおみくじを引く。おみくじを引く際は、一つの事柄について、おみくじ一回となる。一度にたくさんの事柄をお訊ねすると、神様もどれに答えていいかわからなくなるからだ。
では、どのようにおみくじを引く許可を頂くのか。ここで使うのが筊杯(ジャオベイ)だ。筊杯というのは半月形の木片が2枚1組になったもので、片面が凸、片面が平らになっている。これを床に落とした時、一つが凸面、一つが平らな面だった時は「聖筊」と言って、神のお許しが出たことを意味する。両方が凸面だったら「陰筊」で、否定を意味する。逆に両方とも平らな面が出たら「笑筊」と言って、神がまだ決めていない、あるいは笑って答えない、という意味で、お伺いの内容が不明瞭な可能性もあり、もう一度最初からやり直した方がよい。
こうした手順を経て、おみくじを引くお許しが出たら、筒から棒を一本引く。廟によって筒の大きさは違う。小さいものは筒を手に持って振り、とびだしたり落ちたりした一本を引く。床に置かれた大きな筒の場合は、両手で全てのみくじ棒をつかんでシャッフルするように動かして筒の中に落とし、一番上に頭を出している一本を引く。その後、この番号で良いかどうかを再び神様に伺い、擲筊で答えを確認する。
神のお許しが得られたら、番号が書かれた箱の中から、籤詩(みくじ箋)を取り出す。それをじっくり見比べると、書き方にいくつかのパターンがあることがわかる。100首、60甲子籤、28首などの種類があり、どのタイプを採用するかは廟が神にお伺いを立てて決める。林茂賢さんによると、おみくじの内容にも二つの種類がある。一つは有名な芝居の物語が書かれたもので、「文王拉車」や「陳三五娘」「三顧茅廬(三顧の礼)」などがある。これらの歴史物語や伝説を通して神の教えが書かれているのだ。もう一つは詩で表現されているものだ。内容が分からなくても、各種の問いに対応する解説――例えば、財必獲、訴得理、婚可成などと書かれており、同じ物語をさまざまな状況に解釈して応用できる。
昨年(2024年)の世界野球プレミア12決勝戦の前夜、野球ファンが引いたのは60甲子籤で、「霊鶏漸漸見分明、凡事且看子丑寅、雲開月出照天下、郎君即便見太平」というものだった。その解説の部分には「苦しい時は終わって喜びが来る兆しがある。功名を問うなら、十年の寒窓の末に成功の日が来る」とあり、果たして台湾チームが優勝し、おみくじの言葉通りになったことに人々は驚いたのである。

おみくじを引くときは、先に擲筊をして神の同意を得なければならない。