ルール下での温かい交流
多くのホステルがラウンジを1階など入ってすぐの階に置くのとは異なり、艸祭の1階は道行く人も入って本を読める公共スペースになっている。ただし読書は1時間以内という制限がある。
荘羽霈は「本を読む人が減っているので、本が好きな人を大切にしたいのです」と言う。厳しいと思える制限も、本当に本を愛する人に来てもらうためだ。
ある時、自分の好きな本の原書があるのを見つけた子供が、それを買えないかと聞いてきた。本の販売はしていないので、「まず中に入ってゆっくり好きな本を選んで読みなさい」とその子に勧め、どんな本を好むのかをよく確認してから、本をプレゼントしたという。
互いの尊重がなければ快適な宿泊環境は作れない。そう考える荘羽霈は自分の決めたルールに一切の譲歩をしない。だから、ここでのルールを守れるかどうか宿泊前に客に繰り返し確認する。それで宿泊をやめるという客には、「ご縁がなかっただけですね」と返事するそうだ。
そうした原則の裏には、客に対する彼女の細やかな気遣いが隠れている。一般のカーテンレールは使わずに木のポールを使用し、ロッカーは手動のダイヤル錠、これも彼女のこだわりだ。ベッドのそばに掛けてある「漁師網バッグ(台湾伝統の買い物バッグ)」は、シャワールームに行く際に衣類などをここに入れてもらえばと、彼女が多くのホステルを視察した結果のアイディアだ。
マイペースを貫いているようで、実は隅々まで細かく丁寧に配慮されている。艸祭のこのユニークさは、台南でもここだけかもしれない。