台湾の懐石料理
空間だけでなく、料理にもご主人の個性が発揮される。
メニューはすべてお任せで、林さんが市場で選んだ食材を使ったオリジナルの料理が供される。原則として天然素材を使ったあっさりした味だ。「自分が食べたいと思う料理を出します。空間も料理も私が手がけるので、全体に統一感があります」と林さんは言う。
雅宴は冷たい前菜から始まる。淡いブルーの器に氷を敷いた上に鯛の皮とエビがサラダ風に仕立ててある。花をつけた桃の枝が添えてあり、風景画を思わせる。
続いて自家製のピーナッツ豆腐をいただいた後、さらに素晴らしい料理が出てくる。宜蘭産の刺身とレンコンを稲荷寿司の皮で巻いたものに、宜蘭の屋台で使われる山海醤というソースをかけたものだ。これこそ台湾らしい刺身料理である。続いて、桜の季節というので、林さんが摘んできた桜の葉と鯛を一緒に蒸した料理が出てくる。最後は、3時間かけて煮込んだ鶏と蓮の実のスープで、まったく文句の付けようのない食事が終わる。
コースの主な料理は7品、小鉢やデザートを加えると12品で、上述の他に宜蘭独特のさつま揚げや椎茸のおこわ、米の粉で作った客家の麺などの郷土料理も供される。料理の順番は、冷たいものから温かいものへ、そして最後に熱いスープで締めくくられる。合間には茶や酢や酒も供され、余韻を味わいながら次の料理への期待を高める。
酢は季節によって異なる。春は水蜜桃、夏はパイナップル、秋は木犀の花、冬は梅の酢だ。最後に出されるワインも有機葡萄のものだ。
「台湾文化は中国の根に台湾の実体があり、日本の影響も受けています。ここの料理はこの三つの元素を高いレベルで融合させることで精緻な美食となっています」林谷芳さんは、食養山房は郷土レベルだった台湾文化を一つ高いレベルに押し上げたと言う。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。