「あなた、年老いた私の白髪が銀のように輝く時、人生は朝露のごとく、過ぎし青春を思う」
帰らぬ青春、短い人生を嘆く歌「白髪吟」は、誰も逃れられない運命を訴えている。
年月は人を老いさせるが、人はいつ老いに気づくのだろうか。最初の白髪だろうか、顔に皺が忍び寄り、手に持った新聞を遠ざけるようになった時なのだろうか。実際には青春を謳歌しているその時に、老化は静かに忍び寄っている。
唐代の文豪・韓愈は「十二郎を祭る文」において「吾が年未だ四十ならざるに、視は茫々にして髪は蒼蒼、歯牙は動揺す」と慨嘆した。
一般の観念では、不惑は老化の敷居を跨ぐ年である。その年齢になると、誰でも多少とも目は霞み、髪は白くなってくるからである。
白髪は、老化を気づかせる最初の警告である。
文筆家の陳さんは、最初に髪に白いものを発見した時の気持ちを「落胆」の一語で形容した。まだ30歳だった彼女は、白いものを見かけるとすぐに抜いていたが、悔しいことに原稿の締切りに焦る時ほど白髪に気づくのである。
もう一人、お洒落な魏さんは出産後に耳の両脇が白いのに気づき、世界崩壊のようなショックを受けた。最初は見れば抜いていたが、増えるにつれて染めることにした。一本でも許せない彼女は、1~2ヶ月に1回は美容院に出かける。「白髪は10歳は老けて見えるので、染めます」と、すでに50歳を過ぎながら若々しい彼女は言う。
地下鉄で通勤している40歳過ぎのある女性は、以前は駅に置かれたタウン情報誌を見ながら時間をつぶしていたが、老眼が進行してからは公の場所で老眼をさらすまいと、ぼんやり周りを見るだけで、情報誌を読まなくなってしまった。

汚染、ストレス、食習慣、生活習慣などが現代人の老化を早めている。長時間にわたってモニターを見続ければ、視力も低下する可能性がある。
人は頭上の髪を言い
なべて、愁いに向けて白しとするが
手を拍ち白い沙鴎を笑う
一身が愁いではないか
――辛棄疾「菩薩蛮」より
若白髪は悩みや愁いと関係が深い。歴史的に有名な「伍子胥は昭関を過ぎて一夜で白髪となる」物語は、よく引用される例である。
ところが、若白髪が愁いや挫折などと関係があることは、実は医学的には証明されていない。
台湾大学皮膚科の蔡呈芳医師によると、一身上の大きな変化は抜け毛を招くことはあるが、白髪になることはないのだそうである。すでに生えた頭髪はすでに死んでいて、髪のメラニン色素が瞬時に消失することはないし、しかも髪は1ヶ月に1センチ程度しか伸びないので一夜にして白髪になることはありえないそうである。
短時間で白髪になることがある唯一の可能性は、円形脱毛症の場合である。円形脱毛症で脱毛するのは黒髪だけ、伸びるのが早く太い白髪は脱毛しない。白髪交じりの人は円形脱毛症で、黒髪だけが抜け落ちて白髪が残ると言われる。
愁いで髪が白くなるのではなく、白髪は老化の始まりなのである。国外の研究によると、早発性の白髪は、骨粗鬆症や虚血性心臓病など老化による病気と一定の関係があると、蔡医師は言う。
日本人が白髪を知恵や権威の象徴と見るのとは異なり、中国人は年をとったら太鼓腹で禿げになるのはいいが、白髪は好まれず尊ばれない。

外見はメイクでごまかせるかもしれないが、内面は努力にかかっている。継続的な運動は決して欠かせない。
中国大陸の歴代の人民大会では、居並ぶ中高年の指導者層がどれもこれもみな黒髪だと報道された。漢方医の観点では、髪は血の余りで腎の華であるとする。血気盛んなら髪は黒々と潤い、体が衰えると髪も衰える。指導者であればなおのこと、気力共に充実していなければならないもので、公の席で衰えを見せることは許されない。
西洋医学の観点からすると、白髪はメラニン細胞が衰えた結果である。
蔡医師によると、人体が合成するメラニン細胞の数は30歳を過ぎると毎年8~20%減少するという。頭髪の毛根には75~100のきわめて活発なメラニン細胞があり、髪が伸びる時に色素を作り出すが、細胞が働かなくなると白髪になる。メラニン細胞が働かなくなるのは、細胞が死んだからなのか、それとも一時的に機能を失うだけなのかは、今でもよく分っていない。
白髪がいつから出始めるのかは、人種差と個人差がある。統計では白人は平均34.2歳で白髪が出始め、50歳になると半数が胡麻塩頭となるが、黒人は平均して10歳ほど遅れる。しかし、白人は白髪が出ても元の髪の色が薄いのであまり目立たないが、黒髪の東洋人だと差がはっきりして、人目を引きやすい。

さまざまな色の白髪染めが頭髪に色を補ってくれる。美と健康のためにも、医師はカラーリングは月に一度以下にするよう勧める。
染めれば目立たなくなる白髪と異なり、視力の問題はより人を落ち込ませる。
子供時代に目の使い方が悪いと近視になり、20歳くらいになってようやく眼球の発育が完了し、それ以降は近視の度数は変ることはない。それが中年になり、遠近を調整する眼球の筋肉が弱まると老眼となる。遠いところが見えなくなり、近くもはっきりしなくなるのである。
新店の耕莘病院精神科の楊聡財医師と台北三軍病院視力保健科の戴明正主任は、共同で「老眼の不安心理調査」を実施した。その結果、老眼の人の3分の1に悩みや不眠などの老眼不安現象が見られたという。
老眼の人は、レストランでもメニューを見ず、本や新聞を見なくなる人もいると言う。
戴主任によると、角膜と水晶体は網膜に外光の焦点を結ばせる機能を有するが、角膜は固定されていて、弾力性のある水晶体が周囲の筋肉の助けを借りて厚みを変え、屈折の角度を調整する。老眼とは、水晶体と周囲の筋肉が老化により弾力を失い、調整ができなくなった結果である。
「外傷などの原因がなければ、40歳以前に筋肉が力を失うことはありません」と戴医師が言うとおり、45歳前後に老眼が始まり、年を経て進み、60歳くらいで停止する。
一般的には、近視ではない人の方が老眼を早く感じ始める。例えば視力がよく、軽度の遠視のパイロットなどは、35~38歳くらいで近いものが見えにくくなる。その逆に軽度の近視だと、老眼効果を近視が打ち消し、45歳くらいまでは近いものが見えないことに気づきにくい。
しかし、老化の一種である老眼は避けようもなく、予防も難しい。マッサージや体操、食事療法(クコの実など)は疲労緩和の効果はあるものの、老眼の予防にはほとんど効果はない。

中年になれば、自ずと白髪が増えてくる。無駄な抵抗をするより、心を開いて老いを受け入れるべきではないか。
意外なことに、老眼や白髪に気づき悩む以前から、老化はすでに密かに始まっている。
「生れたその日から老化は始まり、止まることはない」と、台北栄民総病院高齢医学センターの陳亮恭主任は著書『成功老化』で、身体や内臓の老化は20歳代から始まると言う。肺機能は25歳前後から衰え、骨量も増えることはなく減る一方である。皮膚も25歳前後から老化の兆候が現れ、脳も20歳を頂点に衰えていくばかりである。
35歳になると人体では全面的崩壊が始まり、40歳前後で老化の兆候は明瞭になる。衰えたと感じるだろうか。何歳から老齢なのだろうか。老いは主観的な感覚だが、客観的な判断基準がある。
台湾大学皮膚科の蔡医師によると、顔色が斑になり、正常ではない突起物や皺が出て、毛穴が大きくなり、筋肉が弛緩し、脂肪の分泌が変り、輪郭が老いを見せると老けを感じさせる。しかし、現代医学の美容技術のおかげで、現代人の見た目はどんどん若くなってきた。
医学は新しい美感を生み出し、額、鼻、頤を三等分するなど一定の比率で美を定義する。美容整形技術を施せば、満足できる程度に調整できるが、調整が過ぎると、外見は若々しくとも、不自然に見えることになりかねない。
現代生活が老いを加速医学の進歩は人の寿命を伸ばし、見た目を若くするが、外見は誤魔化せても身体年齢が若返るとは限らない。中から腐るというように、内蔵機能から老いるのである。
仕事が忙しく、不規則な食事やプレッシャー、運動をしない生活が、老化を早める恐れがある。生活習慣病を持つ現代のサラリーマンは、見た目は元気でも不健康な要素を内に秘めている。ほっそりとしたウェストを維持して、メタボ症候群を予防する必要もある。
有名な整形外科医によると、これまで60歳以上の高齢者によく見られた退化性関節炎が、肥満や不適切な運動で発生が10年早まり、関節に若年性の老化が見られると言う。
台湾千禧之愛健康基金会が2007年に発表した「台湾人身体年齢調査」によると、身体年齢が実年齢より30歳上という人が4割もいて、うち21~35歳の老化が深刻だった。また胃腸病、高血圧、高脂血症、高血糖などの老化の兆候が、早くも30歳で始まっている。老眼も目の使いすぎや栄養不足で、出現が早まる傾向にある。
中華民国眼科医学会が2007、2008年に会社員を対象に角膜の検査分析を行った結果、21~40歳の青壮年の4割に角膜の酸素不足という老化現象が見られた。角膜細胞を退化させる不適切なコンタクトレンズ使用が原因である。三軍総病院眼科の戴明正医師は、早くからコンタクトの使用を続けると、角膜の内壁細胞が酸素不足で傷ついて、傷つくと細胞が減少し、老化を早めるという。
若者の老化が早まると、児童も早熟になる。
環境汚染、エストラジオールで汚染された食物や日常生活に溢れる化学物質のため、世界各地の児童の発育が早まる傾向が見られる。性的に早熟すると、相対的に老化も早まる。
漢方医の楼中亮によると、漢方の観点では早衰は百病の源で、児童の早熟も老化の一種である。「早熟は子供の生命過程が早まることで、相対的に余命も短縮されます」と楼医師は言う。
青春を取り戻せるのか台湾の人気ドラマ『我可能不会愛你』に出された「初老症状50条」では、用もないのに朝早く目覚め、医療ニュースに関心を持ち、誕生日を嫌い、独り言が多いなどが挙げられ、30歳を過ぎて中年に足を踏み入れた男女の共感を呼んだ。
青春は飛び去り、二度と帰ってこない。白髪が黒くなり、老眼が治ることはないのだろうか。
台湾大学皮膚科の蔡呈芳医師によると、白髪が黒くなることはあるという。たとえば化学療法を受けて抜けた髪が生え変わると、前より黒くなる。これは細胞が再調整して幹細胞が再生すると、メラニン色素が再び呼び起こされるからである。しかし、こういった特殊な状況を除くと、白髪を黒く戻す妙薬はいまだに発見されていない。
漢方には形で形を、色で色を補う考え方があって、黒ゴマなど黒い物を食用すると、髪が黒くなると言うが、効果はあるのだろうか。霊芝や黒豆を食べたら髪が黒くなったと患者は信じるが、それは偶発的なケースで、科学的に実証されていなければ、通則とすることはできない。
美容師として30年余りの経験のある真子さんの話では、あるお客が白髪を黒くするために木耳や黒ゴマを食べ過ぎて気分が悪くなるほどだったが、白髪は増え続け何の効果もなかったと言う。
医学の進歩で若返り医学的には、白髪は染めればいいので重視される問題ではない。ヘアダイの化学剤に発がんリスクがあったとしても、白髪を黒髪に染めようとするのである。
蔡医師によると、統計的にはカラーリングを扱う美容師は長期的に化学薬剤に触れるため、膀胱がんやリンパ腫の確率が高まることが分っている。但し、一般的には1ヶ月に1回程度であれば安全な範囲内と言える。
しかし、もう一つの悩みの老眼は、眼科が力を入れている研究テーマである。
三軍総病院視力保健科の戴明正主任は、すでに新しい視野を取り戻す方法を見出している。たとえば、いま導入されているフェムト秒レーザーは「20秒で老眼鏡にさよなら」をコピーに、老いを見せたくない老眼族に訴えかけている。手術は片目で9万台湾元と高価で、しかも単純な老眼にしか適用できない。戴主任によると、近視のレーシックが角膜を切除するのに対して、老眼のレーシックは同心円を描いて、角膜に多フォーカスをつける(角膜にレンズを作る)のである。
レーシックに加えて、根本的に筋肉の調整力をつけるか、水晶体の調整力を増加して調整力を回復(一時的だが)する研究も行われている。角膜を傷付けずに老眼の問題を解決するもので、将来が期待されている。
老化の成功作家の王文華は「私は中年」の一文で「男は中年に至ると、言葉、髪、テストストロンとすべてが少なくなる」と嘆くが、それでも「家庭状況や富と地位は大きく異なるが、老化という一事においては不思議なほど公平である」と慰める。
人は誰でも老いるが、その老い方は老後の生活の質に影響してくる。台北栄民総病院高齢医学センターの陳亮忝主任は、その著書『成功した老化』でこう書く。老化は不可逆的だが、若い時に運動や食事で体の資本を蓄えれば、老後に機能を維持できて、老化に成功できる。老化の過程で蓄える体の資本とは、骨量と筋肉である。
「老化の過程で最も減少するのが筋肉」と陳主任は言う。研究によると、20~70歳で骨格と筋肉量が少なくとも4割減少すると言う。そこで若い時から運動の習慣をつけておけば、老化は防げないものの、筋肉の量は維持できる。
「昔から美人は名将のごとく、この世に白髪であることは許されない」と言うが、美人も英雄も歳月の残酷な洗礼には逆らえない。しかし、老化に成功するには、外見ではなく心身の健康を維持すればいいということになる。美人に晩年が訪れ、英雄が甲冑を解いたとしても、晩年を楽しむことはできるのである。