装いも新たに
『花甲男孩転大人』は郷土ドラマでありながら、かつてゴールデンタイムによく流れた、お涙頂戴、或いは暴力シーンの多いドラマなどとは一線を画する。親の世代の哀しみや、家族に対する若者の複雑な思いなど、市井の人々がそれぞれの人生で奮闘する様子が描かれ、視聴者が自己を投影し易く、深く感動できるものになっている。外国人労働者や外国人配偶者、祖父母による子育て、都会と田舎の格差など、現代社会の風景が切り取られているのだ。
瞿友寧は、カフカの『変身』に倣って冒頭シーンで大きな虫の着ぐるみを登場させたり、スクールバスを空に飛ばし、死んだ人を宇宙飛行士にしたりした。こうしたマジックリアリズム的な手法はこれまでの郷土ドラマとは異なるムードを作り出し、また劇中音楽をギター演奏だけにしたのもドラマから深刻さを消した。台湾色の濃いモチーフに現代的手法を組み合わせるこうした方法は、何年か前の映画『父の初七日』でもやっていた、と瞿は指摘する。『父の初七日』は台湾の葬儀の様子を描くのにエキゾチックな音楽を組み合わせ、新たな趣きの郷土ドラマとなっていた。
植劇場のマーケティングを担当する「結果娯楽」社のCOOである蔡妃喬は、植劇場のドラマはそれぞれジャンルが大きく異なるので、マーケティングも決まった方法が使えないと言う。『花甲男孩転大人』も、昨年11月のクランクインと同時に情報を公開し、撮影風景や番外シーンを大量にメディアに流したり、ファンとのふれあいの場を設けるなど宣伝に努めた。植劇場シリーズ前作のラブストーリー『茶靡』や推理ドラマ『天黒請閉眼』の評判も悪くなく、従来の台湾ドラマにうんざりしていた人々も、シリーズに興味を抱くようになっていた。
瞿友寧は、実は植劇場以前にも台湾にはジャンルを明確に打ち出したドラマがあったとしてこう語る。例えば、陶晶瑩や范植偉などのキャストをそろえた刑事ドラマ『探偵物語~偵探物語』や、近年の『ブラック&ホワイト』などがあったが、惜しいことに後続するものがなかった。今回、植劇場の打ち出す新たなイメージは、多くの人の注目を集めるだろう。植劇場のようなドラマが増えれば、産業全体も活気づくはずだと。
瞿はまた「植劇場の意義は、現代社会における新たな試みであり対話であるという点です」と言う。とりわけ『花甲男孩転大人』が起こした旋風は、映像業界で働く人々を大きく勇気づけた。若い新人たちの潜在力や、ジャンルを明確に打ち出したドラマの可能性、そして台湾ドラマ産業の将来などが熱く語られるようになったこと、それらはまさに植劇場の「意義」と言えよう。
ひたすら罵り合う盧広仲と蔡振南、原作者・楊富閔の特別出演、虫への変身などのシーンが大きな話題となり、視聴率は右肩上がりとなった。
マーケティングチームは、登場人物の出で立ちや、SNS用のスタンプなどで話題を作る。(「花甲男孩転大人」植劇場フェイスブックページ提供)
マーケティングチームは、登場人物の出で立ちや、SNS用のスタンプなどで話題を作る。(「花甲男孩転大人」植劇場フェイスブックページ提供)
マーケティングチームは、登場人物の出で立ちや、SNS用のスタンプなどで話題を作る。(「花甲男孩転大人」植劇場フェイスブックページ提供)
ファンはシャンプー・イベントを通してドラマの情景を自ら体験した。(荘坤儒撮影)
植劇場Qseriesは短期間に多数のジャンルのドラマを打ち出して視聴者を驚かせた。(「荼靡」植劇場フェイスブックページ、提供)
植劇場Qseriesは短期間に多数のジャンルのドラマを打ち出して視聴者を驚かせた。(「五味八珍的歳月」植劇場フェイスブックページ提供)