近年最大のベストセラーで、最も注目される商品と言えば、2億部を売った『ハリー・ポッター』が筆頭にあげられるだろう。同じくファンタジー小説を原作とする映画「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」はアカデミー賞史上最多の11部門を受賞し、世界で10億米ドル以上を稼ぎ出した。21世紀の初め、この二作品がクリエイティブ産業の伝説を作ったと言えそうだ。
ここ十年、情報産業が世界を席巻してきたが、テクノロジーの成熟とともに市場競争は激化し、利益率や成長率も頭打ちになっている。そうした中、創意と文化を産業に取り入れたクリエイティブ産業が、巨大な富を生む新たなスターとして注目されている。
こうした例は台湾でも枚挙に暇がない。絵本作家ジミー(幾米)の『向左走・向右走/君のいる場所』は映画化されて国内で2000万台湾ドル余りを稼ぎ出し、水墨画の大家である斉白石の作品はライセンスを通して2000万の利益を生んだ。舞踊家の林懐民氏が率いる雲門舞集のダンス教室には毎週8000人が通い、台北県の北宜公路沿いにある創作料理レストラン食養山房は1ヶ月前から予約が必要なほど人気がある。宜蘭県の冬山河で行なわれる「子供の遊びフェスティバル」は、入場料だけで毎年2億を売上げ、輸送や飲食、宿泊などの産業に10億の売上をもたらしている。
そこで政府は一昨年クリエイティブ産業を「チャレンジ2008:国家発展重点計画」の一項目に加え、今後6年間で208億台湾ドルの予算を投下することを決めた。昨年政府が打ち出した5ヶ年5000億の「新十大建設」計画においてもクリエイティブ産業に1000億を当てている。これらの計画を推進する行政院は、3D映画を対象に、国際的な大賞を受賞した者には1億台湾ドルの巨額な賞金を出すことを決め、ハイテク映画産業や映像産業をもりたてていく計画だ。
政府や学界、文化界、産業界が次々と立ち上がり、部門を超えた協力を通して文化経済を発展させようとしている。しかし、実際にクリエイティブ産業を発展させ、文化や芸術によって利益を生み出し、従来型産業をもりたてていくには、どうすればいいのだろうか。
クリエイティブ産業は「物語の産業」とも言える。まず、ひとつの物語から始めよう。
1974年、アメリカ政府は自由の女神像の修築で生じた廃材を処理する業者を募ったが、入札する者がいなかった。ニューヨーク州の廃棄物処理には厳格な規定があり、少しでも処理を誤ると環境保護機関から訴えられるからだ。
最終的に廃材処理を落札したのはあるユダヤ系住民だった。彼はまず人を雇って廃材を細かく分類した。そして、銅の廃材を熔かして小さな自由の女神像を鋳造し、コンクリートと木の廃材でその台座を作り、鉛やアルミなどの廃材はキーホルダーにした。こうして3ヶ月の間に、自由の女神の廃材から350万ドルの利益を生み出したのである。普通なら重量単位で取引される銅の廃材が、記念品として千倍以上の利益を生んだのだが、成功の鍵はクリエイティビティの導入だった。
ユネスコの資料によると、世界のクリエイティブ産業の取引高は20年で4倍に成長している。アメリカでは96年からクリエイティブ産業が航空宇宙、自動車、軍事などの各産業を抜いて最大の輸出項目となっている。

中華民族はかつて世界の陶磁器の代名詞だった。この伝統の陶磁器産業を再び輝かせるには、深い文化的意義を注ぎ込まなければならない。
文化をビジネスに
世界的不況の中、クリエイティブ産業だけは急速に成長してきた。政治大学商学部の呉思華学部長は「クリエイティブ産業は将来の趨勢であり、台湾経済が必ず通らなければならない道です」と言う。
長年にわたってクリエイティブ産業を推進してきたイギリスでは、97年にこの分野の発展を国の重要政策として以来、生産高は同年の6億ポンドから2001年には1125億ポンドへと成長し、195万の雇用機会を生み出した。
アジアでは映像産業やゲームの分野で「韓国ブーム」が巻き起こっている。2001年、韓国のクリエイティブ産業市場は100億米ドル規模となり、同国の輸出総額の22%を占めるに至った。韓国はすでに安価な自動車や家電の生産地といったイメージを払拭している。
産業界では一台の機械が数百人の労働者に取って代わるようになり、先進国において失業率の上昇が大きな課題となっている。電子産業分野では、100億台湾ドルを投資しても500人の雇用機会しか生み出せないが、クリエイティブ産業なら、同額の投資で1万の雇用を創出できる。「張惠妹のコンサートを想像してみてください。その背後でどれだけのスタッフが働いているでしょうか」と呉思華教授は言う。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」のパンフレットを見ると、三部作の製作期間は7年、費用は2億7000米ドルを超える。特殊効果やメークだけで120人、アニメーターは350人、ウェリントンのシーンには2万6000人のエキストラが動員されている。クリエイティブ産業は高い利益をもたらすだけでなく、雇用増加にも大きく貢献している。
台湾経済研究院の試算によると、2001年、我が国のクリエイティブ産業の生産高は4400万台湾ドル、2008年には控えめに見ても1兆1600億に達するという。

西洋のアールヌーボーのラインと東洋のイメージを融合させた「バタフライ」シリーズはフランツ社の代表作、アメリカでギフト賞を受賞した。
無形の文化が変わる
ただ、文化という言葉の示す範囲は広く、創意・創造はあらゆる技術分野で活用できるため、クリエイティブ産業の定義は曖昧で、定説と呼べるものはない。
ユネスコでは、文化産業を「無形の文化を本質とするコンテンツを、創造、生産、商品化した産業」と定義付けている。呉思華教授は「クリエイティブ産業を大きな厨房に喩えるなら、文化という食材と創意ある調理方法がなければ、産業という料理は出来ない」と説明する。
我が国の経済部文化創意産業推進チームでは、クリエイティブ産業として視覚芸術、パフォーマンス、出版、放送、映画、広告などの14項目を定めている(表を参照)。
こうした幅の広い産業分野を見て、国立台北芸術大学応用媒体芸術研究所の夏学理助教授は、短期間で国際競争力を持つ産業を育てるのは極めて難しいと指摘する。「もっと的を絞るべきです。できれば5項目以内に抑え、将来的に項目を増やしていけばいいのです」と言う。
夏学理助教授は次のように説明する。台湾では広告、出版、ゲーム、流行音楽などの分野に一定の歴史があるため、創意から組織管理、マーケティングまで産業チェーンが成熟し、完備している。歌手を例に取ると、シンガポール出身の孫燕姿や、タイム誌の表紙を飾った周杰倫、中国大陸でも大ヒットしている張惠妹などは、すべて台湾のクリエーターが仕掛けて成功したものだ。
こうした既存の優位性のある分野を選出し、それらの産業の向上に力を注いで創作を盛んにし、類似しているが異なるクリエイティブ商品を生み出して産業センターの形を採れば、市場を拡大でき、主流のトレンドを生み出せるだろう。
トレンド観察を専門とする詹宏志氏は、これら優位な分野を情報産業と結びつけ、電子ブックやデジタル音楽、コンピュータゲームなどを発展させれば相乗効果を上げることができ、この点で台湾は韓国より優れた条件を備えていると指摘する。

クリエイティブ産業は経済的利益をもたらすだけでなく、地域への愛着や質の高い生活といった社会的利益をももたらす。写真は宜蘭県の緑の博覧会の模様だ。
神秘的なコア
東呉大学社会学科の劉維公助教授は、クリエイティブ産業の定義について議論するより、その「コア」となる要件を掌握することの方が大切だと考える。それはコンテンツ主導というだけなく、商品やサービスの面で魅力的な物語性を持ち、消費の過程で人々に感動や喜びを体験させるという点だ。
例えば世界中で成長を続けているスターバックスの真の魅力は、コーヒーの味や空間にあるのではなく、映画を通して作り出されたイメージにある。主演の男女のようにスターバックスでデートをすることが都会のヤッピーのステータスシンボルとなり、スターバックスの紙コップを手に歩く姿はニューヨークの風景の一つと化している。
一方、近年台湾でレトロな商品が売れているのは、世代の記憶を呼び覚ますからだ。「クリエイティブ産業が創出する価値の鍵は質と美感にあります。その感動が極限まで発揮された時、驚くべき価値を生み出すのです」と劉維公助教授は言う。時には一つの都市全体がクリエイティビティを発揮する媒介となる。
青春ドラマ「流星花園」(日本の漫画『花より男子』を原作とするドラマ)の大ヒットで、ロケ地となった嘉義の中正大学が少年少女の憧れの大学となった。また誠品書局や紫藤廬といった店の存在によって、台北市も文化的な雰囲気を持つようになったのである。
「台北市はランドスケープの建設競争をするのではなく、文字や映像や物語を通して世界に知ってもらうべきです」と劉維公助教授は言う。

商品に物語を持たせ、消費者に感動と喜びをあたえる。近年流行しているレトロ商品は、クリエイティブ産業の核心をつかんでいる。
文化にも資本が必要
しかし、クリエイティブ産業も一つのビジネスであるからには、まず「文化資本」がなければならない。
政治大学商学部の呉思華学部長はクリエイティブ産業には次のような資本があると考える。一つは知的所有権のある音楽、文学、美術、アニメ、造形などの創作、もう一つは創作の背景となる歴史的遺跡や自然景観、ロケ地など、第三は地域の特色を示す言語や習俗、民俗活動などである。
例えば武侠映画のブームを捲き起こした「グリーン・デスティニー」の場合、アメリカの巨大資本を背景としているが、アン・リー監督は東洋の文化資産を充分に活用した。壮大な紫禁城やカンフーの立ち回り、譚盾の音楽にヨーヨー・マのチェロ演奏を交えて東洋的な義侠の精神を描き、有名ではなかった武侠小説を世界に知らしめた。「さまざまな文化的要素を結びつけられるクリエーターの存在が成功の鍵と言えます」と呉思華教授は言う。
世界の他の都市と比較すると、移民社会である台湾は、中華文化の深い基礎の上に日本植民地時代の文化の衝撃を受け止め、さらに海洋国家の開放的な性質をもって、地域的特色と国際的視野を兼ね備えた国へと成長してきた。
そして情報産業発展の過程で蓄積された資本と、テクノロジーの国際的整合のネットワークやグローバルオペレーションの経験は、すべてクリエイティブ産業が最も必要とする要素でもある。
「文化界と産業界という両極の人材を少し中心に向けて移動すればクリエイティブ産業は動き出します」と呉思華教授は言う。

芸術作品のデジタル化によって、クリエイティブ産業ではスピーディな複製や多重運用が可能になり、情報をどこへでも送れるようになった。
文化もカネに向かう?
しかし、文化と産業はもともと両極に位置するもので、一種の緊張した関係にある。
「クリエイティブ産業は『産業』ですから、当然利益を追求するものです」と台北芸術大学の夏学理助教授は言う。「産業の重要なポイントは消費者志向という点にあり、消費者のニーズに迎合しなければなりませんから、高潔を自任する文化芸術界は考えを変える必要があります」と話すのは台湾経済研究院から文化建設委員会クリエイティブ産業プロジェクトセンターの主任に就任した朱正中さんは指摘する。
産業化は、大量化、標準化を意味するが、批判精神をもって時代の先端を行く芸術家がこれを受け入れられるのだろうか。
「産業化は悪いこととは限りません。文化と生活を近づけるもので、異化、狭化させるものではありません」と語るのは台北市のクリエイティブ産業顧問で仏光人文社会学院芸術研究所所長の林谷芳氏だ。
ただ、芸術、特に表現芸術の価値は複製できない経験という点にあり、唯一無二のオリジナル・コンテンツでなければならない。では、クリエイティブ産業のコアに位置するパフォーマンスや音楽、美術などの項目は、どのように大量化し標準化していけばいいのだろう。
クリエイティブ産業政策の推進者で、行政院の政務委員を務める陳其南氏は、クリエイティブ産業の構造から説明する。クリエイティブ産業は内から外へ3層に分かれている。一番内側のコアの部分は美術、演劇、音楽、文学などの本格的な芸術、その外側は応用面としての広告デザインや建築設計、メディアなど、そして一番外側は内側から派生する製造やサービス、観光など、つまり最も産業化しやすい部分である。「コアたる芸術創作について、文化建設委員会はテクノロジー産業における国家科学委員会のような役割を果たします。つまり国家の力を文化育成の源に注ぐということです」と陳其南氏は言う。
「もともと価値がなければ付加価値などありえません」と林谷芳氏は言う。純度の高い文化芸術があってこそ創意と産業が育ち、高付加価値産業を発展させることができる。

台湾の消費市場には外国の文化と価値観があふれている。クリエイティブ産業は利益を生むだけでなく、自国の文化と自信を再確立するものでもある。
雲門舞集の産業的価値
台湾で表現芸術の世界を切り開いてきた、台湾現代舞踊そのものとも言える雲門舞集を例に見てみよう。創始者の林懐民氏によると、雲門舞集の2002年の収入は1億2200万台湾ドル、その半分近くは公演の売上、残りの半分は国と民間からの賛助金である。派生的商品の売上は360万に過ぎず、決して多くはない。支出の1億2400万余りを差し引くと、これでも180万余りの赤字となり「創意で富をなす」という理想とは程遠い。
しかし、昨年の国家扶植団体の資料を見ると、全国のプロダンサー96名のうち雲門舞集に属する人は35名を占め、それ以外の越界舞団の羅曼菲、当代伝奇の呉興国、太古舞踊団の林秀偉、光環舞集の劉紹爐、優劇場の黄志文なども全員雲門舞集の出身である。舞踊家育成における雲門舞集の貢献度がうかがえる。
ステージに照明が降り注ぎ、ダンサーが宙を舞う。「この時、この場所でしか出来ない体験」こそ雲門舞集のブランド化の鍵だ。ブランドが確立すればそれを商品化できる。だからこそ、政府がクリエイティブ産業の無限のビジネスチャンスを強調した時、林懐民氏は政府に対し「まずは文化から着手し、産業はその後で」と建議したのである。

(国立台北芸術大学提供)
斉白石の名画を杯に
大勢の人が参加するコストの高いパフォーマンス芸術では、そこから生まれる商品の売上は収入のごく一部に過ぎない。しかし「臨場感」をあまり必要としない美術や出版などの産業は、印刷や録音、映像、インターネットなどを通して大きな利益を上げることができる。
地下鉄の乗車券やマグカップ、寝具にも絵本作家・幾米の絵がプリントされている。ライセンスによる商品化を通して、幾米のイラストは台湾・香港・中国大陸で毎月平均3億台湾ドルを稼ぎ出す。
一般大衆に人気があるとは思われない伝統の水墨画も、アートキー芸奇芸術ライセンスセンターの働きかけで、商品化された。民国初期の水墨画の大家、斉白石の作品が、杯、碗、鍋などの食器や調理器具にプリントされ、一枚の絵が2000万台湾ドルの収入を生んでいるのである。
台北芸術大学の夏学理助教授が、ある時、学生がコンピュータゲームをやっているのを見ていたら、画面上の飛行機を撃ち落した時に「トルコ行進曲」が流れるのに気がついた。「上手に使えば、文化の産業化は芸術の神聖さを汚すどころか、かえって文化を再び輝かせることもあります」と夏助教授は言う。

地方の産業と文化を融合させた屏東のクロマグロ文化観光フェスティバルは、地元に大きな収益をもたらしている。
感動を売る
OEM(相手先ブランド製造)やODM(相手先ブランドでの自社設計製品供給)やOBM(自社ブランド生産)などを経験してきた産業にとって、クリエイティブ産業は再び輝きを取り戻す契機となる。
伝統の陶磁器や服飾、工芸といった産業は、寸分たがわぬOEMで大量生産の基礎を作り、ODMへと発展してデザインを手がけるようになり、世界市場の傾向を模索するようになった。そしてついに、まったく新しい創意で自社ブランドを確立し始めた。台湾の陶磁器ブランド 「フランツ」は、まさにクリエイティブ産業への変身を遂げた代表的存在と言えるだろう。
フランツが属する海暢公司は30年にわたって欧米メーカーのOEMやODMをしてきた歴史を持ち、テディベアだけで2億個以上製造してきた。しかしODMに飽き足らなくなった同社は、長年培ってきた視野と人脈を生かして、2001年に独自のブランドを打ち出し、フランツ社を設立したのである。
2002年、フランツ社はアメリカに進出し、ニューヨークの国際ギフトフェアでベスト・コレクティブル・ギフト賞を受賞、高級デパートであるニューヨークのニーマン・マーカスとロンドンのハロッズへの出店を果たした。現在、フランツは世界に4000の販売拠点と6000人の社員を持ち、今年の売上は500万米ドルに達する見込みだ。
フランツ社の陳立恒総裁は、自社ブランド確立に最も重要なのは「商品に物語性を持たせること、それが人を感動させるからだ」と言う。ギフトフェアで受賞した「バタフライ」シリーズを見ると、蝶の造形が瓶の口やカップの柄についている。長く引かれたラインがアールヌーボーを思わせ、また敦煌の壁画に舞う天女のようでもある。
「アールヌーボーのスタイルを選んだのは、年間1000点もの新製品を作ってきた市場経験の蓄積によります。流れるようなエレガントなラインが人をリラックスさせ、現代人に好まれるのです」と陳立恒氏は説明する。フランツ社が店舗や会報を通して紹介するストレチアやベリーの絵が入った器も、それぞれ感動的な物語を語っている。

創意と物語によって都市は独特のスタイルを持ち、競争力を高めていく。都市は文化や創意が交流する大きなステージでもある。
チャレンジするのは誰?
政府の文化建設委員会は、クリエイティブ産業を推進し始めてから、陶磁器ビエンナーレや衣パーティなどのイベントを開催し、またクリエイティブ産業プロジェクトセンターは税の減免や融資、法律相談などのサービスを提供してきた。3月初旬には「台湾クリエイティブ華山店」が台湾のクリエイティブ商品に触れる窓口としてオープンした。
行政院の陳其南政務委員は、まず大切なのは「コンセプトの提出」だと言う。文化が産業へと変わる時、挑戦にさらされるのは文化だけでなく、従来の産業思考も変えなければなければならないからだ。
「長年にわたって政府も民間も、製造業の基準で物事の価値を判断してきました」と指摘するのは劉維公助教授だ。全国工商調査の資料では骨董品売買も画廊経営も、小売業の「その他」の項目に入っており、葬儀業と同列に扱われる。各種の補助や保険や融資も不動産や設備を担保とており、創意や人材を資本とするクリエイティブ産業には適用できない。無形の文化的資産を評価する方法だけをとっても、各界がゼロから学ぶ必要がある。
「政府は、異なる産業が創意をぶつけあう場を提供することがでる」と呉思華教授は言う。芸術祭や地方博覧会、映画祭などを通して、さまざまな分野の知恵がぶつかり合えば、新たなクリエイティブ産業の誕生を促すことができる。
例えば台湾特有の結婚写真業は、服飾デザインと写真を結びつけた産業だが、これにロマンチックな結婚式とオリジナルの旅行を組み合わせれば、世界中のカップルが台湾を訪れるようになるかも知れない。
97年に町づくりの推進が始まってから、各地の伝統産業の方向性が見えてきた。現在台湾では、宜蘭の子供の遊びフェスティバルや屏東のクロマグロフェア、彰化の花と緑の博覧会、貢寮の海洋音楽フェスティバルなど、毎年100以上のフェスティバルが開かれている。地域の産業と文化、観光とレジャーを結びつけたこれらのフェスティバルは、文化的創意を通して地域産業に付加価値をあたえ、それによって大きな経済効果を上げている。

異彩を放つガラス工芸は、近年台湾で最も人気がある高級ギフトだ。写真は琉璃工房の作品「楽水」である。
文化の貿易黒字を目指して
クリエイティブ産業という言葉は耳慣れないが、決して遠い存在ではない。ミッキーマウスのTシャツ、スターバックス、IKEAの家具などは生活の一部であり、テレビをつければ韓国ドラマ、日本のアニメ、ハリウッドの映画が放送されている。
誰もが毎日クリエイティブ商品を消費しているが、その大部分は他国のものだ。他国の無形の文化が、親近感を勝ち取っているのである。
台湾は数々の「王国」の名を勝ち取ってきたが、クリエイティブ産業では大敗を喫し、貿易赤字に陥っている。中国古来のムーランの物語もディズニーによって初めて世界に知られたのである。
台湾は経済成長のために世界の工場となり、多くの外貨を稼いできたが、同時に自然環境を犠牲にしてきた。クリエイティブ産業は同様に利益をもたらすだけでなく、社会の質をも向上させ、文化と産業の両者を発展させるものである。Made in Taiwanのクリエイティブ産業が羽ばたこうとしている。

朱陸豪が扮する「美猴王」。(李銘訓撮影)