多種多様な152作品
審査員を代表して発言したCheers雑誌社の劉鳳珍社長によると、今回の入選作のロケ地は、南は屏東県恒春から北は台北の北投まで、さらに合歓山まで台湾全土に及び、これらの作品を鑑賞すれば「まるで台湾をバスで一周しているような」気分が味わえると語った。
第1回の作品に比べると、今回はテーマがより明確で多様だったのが特徴である。前回の作品は夜市のB級グルメや民俗風習、伝統芸能などを扱うものが多かったが、今年はこれらの他にも幅広い題材が取り上げられていた。例えば第三位に入選した『丸い月を見て思う』は、屏東県恒春で現地住民が地域の伝統民謡を守ろうとする活動を記録したものだ。『台湾正体字(繁体字)』を制作した頼凱٤Qさんは、花蓮まで赴き、万年筆店を経営する80歳代の頼忠義さんが繁体字を守ろうと努力する姿をとらえている。『台湾田中馬』は、ハイスピードカメラを用い、昨今のマラソンブームを描いた作品だ。
参加者は影像を通して、それぞれ多様な台湾の一面を表現した。入賞作品は、どれも自分の暮らす地元を出発点とし、感動的な物語をとらえたものである。
例えば『夢のバス——豊原客運6506路線』で最優秀賞に輝いた徐仲彦さんは、このバス路線が実は東南アジアで最も標高が高い地域を走り、しかも走行時間が最も長いことを発見した。そこで、仕事の合間に3人の仲間と1カ月余りをかけて調査を重ね、映像を撮影し、最後は彼が編集して作品を完成させた。
3分のショートフィルムに、豊原客運のバス運転手が南投県の埔里や合歓山を走る日常の姿が描かれている。徐仲彦さんはドローンで撮影した合歓山の美しい景色も加え、台湾で最も大切にしたい人情と温もりを描き出した。
『歳月の宅急便』で第3位に入賞した蒋煥民さんも、身の回りの暮らしから題材を取り、北投のバイクタクシーの運転手である張羅興さんの物語を描いた。北投で育った蒋煥民さんによると、北投では狭い通りが多く、学校への子供の送り迎えや貨物運送など、バイクタクシーが活躍しており、これは北投ではごく日常的な光景だという。これほどユニークな物語があるのに、他の地域の人にはほとんど知られていないと思い、カメラで記録したいと考えた。
最優秀賞に選ばれた『夢のバス——豊原客運6506路線』は、毎日豊原と合歓山の間を往復する路線バスの物語である(徐仲彦提供)。