生態との共栄
この研究の成果は、2022年に農業部(農業省)林業保育署が打ち出した絶滅危惧種保護措置の焦点ともなった。農業部と生物多様性研究所は24の関係部門を集め、部門を超えた「ヒガシメンフクロウ保護連盟」を2022年に設立。さらに、絶滅の危機に瀕していたタイワンヤマネコとヒガシメンフクロウを、生態系保護費給付の対象にした。つまり、農家による生物生息地の保護を奨励するため、田畑や養魚池、民有林などで殺鼠剤や農薬を使用しない有機農業、或いは自然にやさしい農業をおこなう農家は、希少種保護奨励金を申請できるようにしたのだ。
例えば猛禽類の場合、栽培作物が止まり木より低い農家は、人工止まり木の設置申請ができ、これで3000元の設備維持費が受け取れる。作物の高さの条件には、サトウキビ、稲、カボチャ、レモン、グアバ、ドラゴンフルーツなどが含まれ、しかも猛禽類が撮影できれば、年に1万元の奨励金が出る。
当初、農家は猛禽類がやって来ることに懐疑的だった。だが、このプロジェクトの評価を委託された昕昌生態科研公司によれば、農家の約3分の2が撮影に成功しており、「くじに当たる」確率は極めて高いのだった。
屏東県隘寮の山のふもとでアボカドを有機栽培する李淑萍さんは、2024年9月に止まり木設置を申請すると、1ヵ月内にカタグロトビとイソヒヨドリの撮影に成功、近隣の農家でもコノハズクやカンムリワシが撮影された。
洪孝宇さんによれば、台東県池上郷ではズアオホオジロが撮影されている。これは台湾でこの鳥が目撃された2例目の記録であり、カメラが捉えたのは初めてだった。台湾に迷い込んだに違いないこの小鳥は、かつてフランスでは珍味としてグルメの食卓に上っていたことで有名だ。
止まり木設置は現在、嘉義、台南、屏東などのヒガシメンフクロウがよく出没する地域にも広がっており、生態系保護の考えを持つ人を増やすことが生息地拡大につながっている。ヒガシメンフクロウは固体数も「未知数」だったが、今や500羽近くの生息が把握されるようになった。
林恵珊さんは何年も前からスーパー「全聯」福利センターとの提携で、トビのためにエコ農業で栽培された、ブランド名「イーグル・アズキ」というアズキを全聯に並べている。消費者にも好評なことから、続いて台中市霧峰区の「カタグロトビ米」や、屏東の「フクロウ・パイナップル」も全聯に置かれるようになった。ほかにも「ヒガシメンフクロウ保護」認証の実施も計画中だ。今や猛禽類は農家のパートナーとなり、エコ農業は双方に利益をもたらしている。

屏科大鳥類生態研究室は2017年から止まり木を用いた研究を続けており、これまでに台湾全土で猛禽類以外の鳥類を70種撮影した。(洪孝宇さん提供)

止まり木で撮影されたカタグロトビがポーズをとっている。(洪孝宇さん提供)

写真は、片足で立つ、ハヤブサ科のチョウゲンボウ。(洪孝宇さん提供)

ヒガシメンフクロウは、台湾で唯一、森林ではなく草むらに棲むことを好む猛禽類だ。(洪孝宇さん提供)

屏東県高樹郷でコノハズクの保護に配慮した農業を進める農家と協力し、林恵珊さん(左)はブランド「フクロウ・パイナップル」をスーパー「全聯」で販売する。(林恵珊さん提供)