華麗なる変身――林班道の革新
車埕のショッピングエリア「林班道」のマーケティングディレクターでもある孫嘉璐さんは、しばしば「林さん」と呼ばれてしまうので、訂正するとともに林業の話をするようにしている。「『林班』というのは林地の区画の単位なのです」と説明する。子供の頃から、家族が「林班、林班」というのを耳にしていたことから、祖父を記念してこの言葉を使うことにした。「道」には新たな道を歩みだすという意味が込められている。
2008年にアメリカで音楽を学んで卒業したばかりだった孫嘉璐さんに、父親は帰省してやってみないかと聞いてきた。「当初、父は私に土産店を一軒だけやらせるつもりでした」と言う。完全に門外漢の彼女は、このショッピングエリアの運営に乗り出し、土産物の開発を研究したところ、台湾の多くの観光地の商品には、その土地らしい特色がないことに気付いた。そこで彼女はショッピングエリアに出店する店に対して、「地元の特色を持つ商品を扱い、営業時間を定めてそれに従うこと」という条件を出した。それから十数年、林班道はすでに軌道に乗っている。2022年には修復された車埕小学校の空間を買い取り、「林班道鉄路小学校」を設け、ここを芸術文化のプラットフォームにすることにした。展覧会を開いたり、アーティスト・イン・レジデンス事業を行なったりする場である。「車埕にはさまざまな人が訪れるので、この場所で芸術家の作品に触れてもらうことができます」と言う。
車埕の町に足を踏み入れると、林班道小学校とLouisaコーヒーが共同で海外から招いたアーティストMar2inaのグラフィティアート「夢の中のウサギ」が目に入る。屋外の巨大な絵画は、人気の撮影スポットとなっている。学校のホールに置かれたストリートピアノは彼女の母親の嫁入り道具で、誰でも自由に演奏できる。各教室は展覧会場として利用でき、ある教室ではベアブリックたちが音楽の授業を受けていた!
5年後、10年後に目標を定めると、車埕はアートの町になり、そこから未来が開けてくるかもしれない。「いつの日か、車埕は日本の直島(日本の瀬戸内海にある「現代アートの聖地」とされる島)のように、多くの人がわざわざ訪れるようになるかもしれません」と、孫嘉璐さんは期待に胸をふくらませる。

孫嘉璐さんは、車埕を、人々がどんなに遠くからでも訪れたいと思う町にしたいと考えている。

「振昌木業」創業90周年記念展。林業に関するさまざまな資料が展示され、旅人も車埕の歴史を振り返ることができる。

「振昌木業」創業90周年記念展。林業に関するさまざまな資料が展示され、旅人も車埕の歴史を振り返ることができる。

貯木池の傍らに建つかつての資材課のオフィスが、現在は湖畔のレストラン「隠茶Steam」となった。お茶を飲みながら山間の町の静けさにひたることができる。

孫海さんの好物だった東坡肉(豚の角煮)をメインにした木桶入りの弁当が車埕の名物となった。

木業展示館には、丸太から木材を切り出すかつての作業場が残されている。

林班道商圏のロゴマーク。緑は山林を表し、オレンジ色はかつて機具のさび止めに塗った塗料の赤を表している。

かつて木材乾燥室の窯だったスペースも展示空間になり、林業の資料が展示されている。

新鋭アーティストMar2inaに依頼したグラフィティアート「夢の中のウサギ」は車埕で人気の撮影スポットになっている。

廃校になった車埕小学校の校舎が、今では芸術文化の交流の場「林班道鉄道小学校」に生まれ変わった。

林班道鉄道小学校の教室ではベアブリックが授業を受けている。