さまざまな議論の中、2010年、台北国際花卉博覧会が開幕した。開幕から2ヶ月、暑い日も寒い日も毎日数万人が入場している。グリーン建築やドリーム館のハイテクを見るため、あるいは花を観賞するためと、人によって目的はさまざまだ。
花こそ花博の主役だが、今はパビリオンの建築やテクノロジーが注目され、焦点がやや外れているようだ。会場に植えられた数々の花の中には、非常に希少な品種や、栽培・展示は不可能と言われたものまである。
それらの花の美しさの背後に隠された苦心と秘密の物語に耳を傾けてみよう。
オレンジや黄金色が鮮やかなマリーゴールド、紫の濃淡が美しいセキチク、青や白、バイオレットのリンドウなど、数々の花が気高く咲き誇る。
2010年11月6日の開幕から12月中旬までの40日の間に、花博の入場者は200万人を超えた。花博事務局のアンケート調査によると、満足度は8割を超える。
満足度の高さは、宣伝の中心となっている建築物やハイテクの他に、一面を覆う花の美しさによるところが大きい。

押されたりぶつかったりしないよう、花卉の輸送には特殊なラックと包装が用いられる。写真は福埠実業が清境農場から花を出荷する様子。
台北花博は、実は園芸面でこれまでの花博にはないさまざまな記録を打ちたてている。
円山エリア入口にある植栽壁は台湾で最大のものだ。高さ6メートル、幅50メートルの壁にクリプタンサス、アンスリウム、ハクチョウゲなど多年生の植物があしらわれている。
漢明景観公司のデザイナー・夏漢明によると、陽光の当り方に差があるため、実は植栽壁の裏側(南面)の方がたくさんの花が開いているが、一般の見学者は正面の花博ロゴと一緒に記念撮影をするため、裏側の美しさに気付かないという。
エリア内では、広い面積に鉢植えの花が敷き詰められている場所がたくさんある。
12月の円山エリアは一面のポインセチアが美しい。赤や赤と緑、黄色と白、黄色と赤、紅白などの他に、紫と黄色のコルテスバーガンディーや、ソノーラ、ノーベルスター、スプレンダー、エッケスポイントフリーダムなど、台湾ではあまり見られない品種も並んでいる。1月になるとこれが水仙に入れ換わり、やはり広大な面積の花畑を楽しめる。夏漢明によると、水仙をこのように植えるのは世界でも初めてのことだ。
数十万株にも及ぶ一面の花の海は、これまでの花博にもあまりなかった特色の一つだ。
各国の花博を見てきた高雄花卉市場マネージャーの趙昌孟は、これは台湾人の好みに合わせたデザインだと言う。これまでロッテルダムや大阪、瀋陽、チェンマイなどで開かれた花博に比べると、台北花博の「花の海」は空前の規模を誇る。ロッテルダムの花博では、展示はエコ技術や汚水処理、廃棄物処理などが中心で、それ以外は人工の湖沼と芝生とチューリップが見られただけだ。
だが、台北花博では広大な花の海が楽しめる。中山サッカーグラウンドの観客席には21万株、7色の花が弧を描く「七道彩虹」があり、円山公園エリアには1ヘクタールを占める花のランドスケープ、大佳河浜公園エリアには「大地花海」があり、その迫力は北海道の広大な花畑を思わせる。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。
台北花博は、花博の歴史の中でも初めて都心で開かれている。これについては国際園芸家協会(AIPH)のドゥーク・ファーバー主席も称賛しており、台北花博は今後十年の博覧会の手本になるとしている。しかし、これが実は他の選択肢がない中での苦渋の決定だったことはあまり知られていない。
台北花博の顧問で文化大学景観学部長の郭瓊瑩は「先天的条件不良」と形容する。台北で花博を開催する場合、本来最もふさわしい会場は関渡平原だ。関渡平原なら、湿地と農耕水域をテーマと出来るからだ。しかし、土地の徴収などの問題が解決できず、開催までの時間が限られていたため、台北市立美術館、中山サッカーグラウンド、新生公園、大佳河浜公園などの公有地と既存の施設を活用するほかなかったのである。
こうした条件に縛られ、オランダの花博のように廃棄されたゴミ処理場の改造といった大がかりなテーマに取り組むことはできなかったが、現実の環境(サッカーグラウンドの客席や円山貝塚史前遺跡、航空航路のための高度制限や騒音)の下で、これまでとは異なる花博が開催できたのである。
「台北花博は何もない土地にゼロから生み出したのではなく、老樹に囲まれて緑にあふれ、それが逆に特色になっています」と郭瓊瑩は言う。すでに開発された市街地は理想的な会場とは言えないが、建築物と環境が生み出す「共生モデル」は別の意味での手本になる。
会場は都心となったが、時期も考えなければならない。花博が最も美しいのは閉幕直前だと言う人もいる。3〜4月こそ台湾の花の季節だからだ。
だが、夏から秋にかけての台風を避けるため、花博は初冬の11月に始まり、春の4月に閉幕することとなった。これについて台北花博の総執行長を務める台北市産業発展局局長の陳雄文は、夏の台風被害に比べると、冬の寒害の損失の方が小さくて済むからだと説明する。花博では半年の間に3300品種、3000万株の花を使用する。地景花海、大地花海、七道彩虹などの広大な花畑では、一度に50〜60万株もの花を植えかえる。中でも面積が最も広く、風を遮るもののない大佳河浜公園では花がダメージを受けやすい。花博開幕直前の台風では浸水はしなかったものの、数日にわたる大雨のために花の3〜4割がダメージを受けた。また、台湾では夏は暑さのために花の質が悪化し、供給量が十分に確保できないのである。

1月に満開の状態で展示するために、福埠実業では3か月前から50品種のチューリップを媒質に植えて冷蔵してある。写真はフリンジのあるハミルトンという品種。
時間的な制限を克服するための苦労も多かった。特に野菜果物エリアの果樹は顕著な例だ。
円山エリアにある果樹は、全国各地に点在する政府農業委員会の農業試験所から提供された。これらの果樹は、その産地で果実をたわわに実らせた状態で花博会場へ運ばれたため、長距離の輸送の間にダメージを受けてしまった。特にバンレイシ(釈迦頭)は手入れの難しい果樹で、最初の1本は屏東から台北まで運ばれる間に果実がすべて落ちてしまい、農業試験所は急いでもう1本補充しなければならなかった。いずれにしても、移動させられた果樹は環境に適応するのが難しく、状態はいま一つである。
花の生長も季節の影響を大きく受ける。
「3〜4月は多くの種類の花が満開になりますが、11〜12月に花をつける植物は非常に少ないのです。この季節には特別な花で会場を盛り上げる必要がありました」と話すのは園芸と景観背景をデザインした夏漢明だ。普段見掛けない花は栽培も難しいものだが、見学者の目を引くためには、さらに珍しい花を選ぶ必要があり、そのぶん苦労も多かったと言う。
こうしたデザイナーの「美」への要求は、生花生産者にとっては大きなチャレンジだった。
「台湾にとって花博は百年に一度のチャンスで、次の機会がいつ来るかは分かりません」と話すのは高雄花卉市場の趙昌孟だ。一般の博覧会と違って花博は生きた植物を展示し、その展示期間は半年に及ぶため、膨大な人手と物資と時間をかけて維持しなければならない。展示に参加する花卉業者の多くは参加することに意義があると考え、大きな利益を求めてはいない。
高雄の生花生産地域は台北から遠く、気候も異なるが、競艶館(美の競艶館)に多くの花を提供している。アンスリウム、ユリ、バラ、トルコギキョウなど1万本以上の切り花、それにアグラオネマ、ポトス、フィロデンドロン、ラン、ポインセチア、アンスリウムなどの鉢植えだ。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。
花博の展示期間は1ヶ月を1期として6期に分けられ、エリアごとに花が入れ替えられる。
花の入れ替えは大作業だ。12月初旬、円山エリアの「地景花海」は二度目の大変身作業を行なった。昼の展示に影響を及ぼさないよう、作業は夜の11時から、100人近くが深夜の作業を行なった。
デザイナーの夏漢明によると、円山エリア全体の花を入れ替えるには7〜10日かかり、毎日見学に来ない限り、七色の虹がドミノ倒しのように変化している様子に気付かないという。
良い仕事をしたいと考える夏漢明は、予算不足を嘆く。園芸費用は当初の3分の2に削られてしまい、本来のデザインも変更を余儀なくされた。「七道彩虹エリアの花の入れ替えは6回から4回に減り、枯れてはいないが色が褪せた状態に我慢していただくしかありません」と言う。

円山公園エリアの中山サッカーグラウンドの客席に広がる「七道彩虹」。鮮やかな色が美しく、多くの入場者がここで記念写真を撮る。
中興大学園芸学科教授の朱建繧ヘ、花博の最も大きな課題は生物の不確実性だと言う。
花も植物も生き物で、生長を速めることなどできない。種をまいてから6〜8週間たたなければ植生袋に移すことはできず、植生袋の中でさらに1ヶ月栽培する必要がある。つまり種をまいてから2ヶ月半以上待たなければ出貨はできず、その間の不確実性が大きいのである。
争艶館と未来館でカランコエの新品種(台湾鵝鑾鼻燈籠草の遺伝子を持つ)とブッソウゲ(ハイビスカス)を展示するために、朱建繧ヘ2010年4月から栽培を開始した。ブッソウゲの花は一つが1日しか咲かないため、毎日開花を楽しめるよう綿密な計算が必要だった。一つの分枝は3日に一つしか花が開かないので、少なくとも9つ以上の分枝が必要となり、1鉢に30の分枝を植えて2週間の展示期間中、毎日花を楽しめるようにしたのである。

数の美。新生公園エリアの花の海は遠くから見るとまるでカラフルなカーペットのようだ。
パビリオン内の花もこれほど計算しなければならないのだから、屋外の花壇となるとリスクはさらに大きい。
草花の展示量が多い円山エリアと大佳河浜エリアでは契約方式を多く採用している。花農家が景観・建築会社の委託を受け、約束に従って草花を栽培して所定の日時に納品する。だが、天候はコントロールできるものではなく、花がいつ咲くかは誰にも分からない。
「大園花卉農場」の呂世皓は桃園県大園の2.3ヘクタールの畑で花を栽培している。花博開幕の3か月前からツリフネソウやベゴニア、サルビア、セージ、コスモス、マリーゴールド、大菊などを栽培し始め、20数種、100万株を花博の新生公園エリアの「林下花海」に提供している。
花の栽培に携わって20年になる呂世皓によると、花博会場に展示する花はすべて満開でなければならないが、露地栽培で最も難しいのは開花期のコントロールだと言う。特に近年は気候が異常なことが多く、花の育ち方の予測は難しい。花博開催前の9月は暑く、10月は冷え込み、2〜3週間も雨が続いたため、生長が止まったり、枯れたものもあり、12月初旬に納品した花はいずれも小ぶりだった。さらに心配なのは、1月に10℃を下回る寒波が来て花が枯れてしまうことだ。
花が咲かないという心配の他に、開花が早すぎるのも問題になる。円山エリアのアスターは開花の時期が合わず、残念な結果に終わった。
アスターは中国大陸原産で温暖な気候を好み、夏の終わりから初秋にかけて咲く。農家の栽培経験が不十分だったため、花博開幕前に満開を迎えてしまい、11月の開幕後は2日で他の花と入れ替えられることとなり、人々に楽しんでもらうことができなかった。
夏漢明によると、台湾の花農家の多くは規模が小さく、一度に大量の花を必要とする時には農家に苗を分配するが、畑の環境やや育て方によって開花の時期も変ってくるので、デザイナーは毎日状況を見て調整しなければならない。

面積が広く、広大な花畑や植栽壁の連なる会場では植物の手入れや入れ替えだけでも大変な作業である。
一方、花博の景観デザインや建築を請け負った会社は、園芸のバックグラウンドを持っておらず、一部には「自然に反する」デザインコンセプトもあり、それが栽培と維持を困難にする部分もあった。
11月中旬、朱建繧ヘ請負会社から電話を受け、屋外の照明の下に植えるポインセチアが欲しいと言われた。「この人は、ポインセチアは屋内用の鉢植えだということさえ知らなかったのです」と言う。ポインセチアは屋外で風雨に当てることはできず、照明の下では日照が長いのと同じことになり、赤い苞が緑に変り、黒っぽくなってしまうのである。
また、一時期メディアに取りざたされた空心菜も実は維持が非常に難しい。
朱建繧ノよると、空心菜は寒波にさらされると葉がダメージを受けて黄色くなるため、ビニールで覆って温度を保たなければならない。温暖な台中でもそうなのだから、台北ではなおさらだ。
天候が不確実な要素となる他、花の性質を考慮しないデザインにも生花生産者は頭を悩ませる。
呂世皓はバーベナホルテンシスで大失敗しそうになった。デザイナーから9月のプレオープン時の納品を依頼されたが、8月に植えてみたところ、まったく順調に育たなかった。そこで草花協会と海外の種子会社に出荷できないことの証明を出してもらったが、デザイナー側は利益関係のある同業者が出した証明書は受け入れられないとし、最後には政府農業委員会が組織した「台北花博契約栽培技術サービス団」の証明を得て、ようやく罰則を免れた。
呂世皓によると、一部のデザイナーはネットやカタログなどで花を選ぶが、そうして選んだ花の多くは一般的な品種ではなく、今はほとんど栽培されていないものや、球根が手に入らないものなどもある。「広大な花畑の重点は鮮やかな色で、品種はあまり重要ではありません。見学者にはそれぞれがどんな花なのかは分からないのですから」と言う。
また、単体で見ると美しくても、広大な花畑になると逆に乱雑な感じがするものもある。例えばトレニアは、青地に白い縁取りが美しいが、一面の花畑にすると白でも青でもなく、ぼんやりした印象しか残らない。

押されたりぶつかったりしないよう、花卉の輸送には特殊なラックと包装が用いられる。写真は福埠実業が清境農場から花を出荷する様子。
誰にとっても未経験の花博だが「失敗は許されない」というプレッシャーの下、主催機関は「花がなく、穴をあける」ことを最も恐れる。そこで農業委員会は病虫害や土壌分析の専門家10数人を招き「台北花博契約栽培技術サービス団」を組織し、栽培を請け負った花農家の問題解決に当ることとした。農業委員会花卉研究センターのアシスタント研究員・丁一が窓口となった。
丁一によると、一部のデザイナーの認識は実際の状況と大きく異なる。「台北の生花市場に出ている花が、台北の屋外で1ヶ月栽培できるとは限らないのです」と言う。
また花博では、市場では見られない花や新品種を多数展示しているが「珍しい花は栽培が難しいか、そうでなければ発芽率が低いのです」と言う。新品種の場合は、花農家もその特性や病虫害などを知らないことがある。例えば、サルビアには赤の他に白や黄色の品種もあるが、栽培してみると花は予期したようには咲かず、フザリウムに感染し、斑点が出たり花が落ちたりして、すべて処分しなければならなくなる。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。
花の栽培には環境や条件が重要だが、球根植物はさらに難しい。種苗や球根を輸入する福埠実業は、花博のユリ、チューリップ、ヒヤシンス、ムスカリ、デルフィニウムなどの球根植物を担当している。
11月中旬、福埠実業がオランダから球根を輸入して栽培したユリの花畑が新生公園エリアにお目見えした。ピンク、黄色、赤、オレンジなど23の品種のユリが一斉に咲き誇り、それは見事だった。中でも珍しいのは中心部が赤くて外側は黄色いショッキング、淡いピンクで八重咲きのミス・ルーシー、ピンクのスーベニアなどだ。
だが、福埠の蒋麗児・総経理によると、主催機関による宣伝が不十分だったため、入場者はその貴重さを知らず、ユリは黙々と咲くだけで非常に残念だったという。
1月、円山エリアでは50品種のチューリップが展示される。八重咲きのモンテカルロ、ユリの花のようなカリブラ、赤い羽毛のような花弁をつけたレッドウィングなど、台湾の市場には出たことのない珍しい品種がお目見えする。
このために福埠実業は南投県埔里にある農場で9月末に球根を媒質に植えて冷蔵した。蒋麗児によると、球根を冷蔵してから植えるとすでに伸びた根が傷つきやすく、媒質に植えてから冷蔵すれば完全な根を保って花が最後まで咲き続けるという。
チューリップは品種によって特性が異なり、それらを一斉に咲かせるのは非常に難しい。「心配ですが、それでも何とかしなければ」と蒋麗児は言う。

生き物である草花にはそれぞれ生長に必要な過程と時間があり、無理に生長を早めることはできない。
台北花博は一般に高く評価されているが、専門家から見ると、不十分なところもある。
景観専門家の郭瓊瑩は、台北花博はもっと精緻なものにできるはずで、多数の花を展示するだけでなく、人を感動させる芸術的な質感が必要だと考える。全体的に見ると、四つのエリアを統合するつながりが欠けており、細部を見ると、色彩プランが良く出来ておらず、色が直接的で深みが感じられないと言う。また植物の適性などを理解しないまま使用していない点も見られる。例えば壁面を覆う花を見ると、生長の速い品種が下の花を覆ってしまい、枝葉の構図が乱雑に見える。
園芸学科教授の朱建繧ヘ、花博の主役であるべき花が「脇役」になってしまっていると指摘する。「花博はもともと台湾の花を世界に紹介するものであるべきですが、今は台湾のテクノロジーの方に焦点が当てられています」と言う。
花博は今後も4ヶ月続くが、春節には大変な人出が予想され、主催機関は気を抜くことができない。
台北市産業発展局長の陳雄文は、6ヶ月にわたる博覧会ではいかに話題や人出を維持するかが大きな課題だと言う。「クリスマスや元旦、春節などに合わせたイベントを行ない、絶えず新しい話題を提供してかなければなりません」
入場者数は予測を遥かに超えており、サービスの質の維持も重要な課題である。
陳雄文によると、春節期間中は1日の入場者が15万人を超える可能性があり、サービス施設の調整も必要となる。例えば、食事エリアは今は4000人分の座席しかなく、入場者から不満がある一方、適当に椅子を増やしたりすると設計者から不満が出て板挟みになる。

台北花博の四大エリア
今は混んでいるので「ブームが収まったら見に行こう」と考えている人も少なくないが、花博の1日当りの入場者数は増え続けており、早い方がいいと陳雄文は言う。
デザイナーの夏漢明は「建て物は残りますが、閉幕したら花は見られません」と言う。
「花博は一時のイベントではなく、重要なのは生活に取り入れることです」と話すのは文化大学景観設計学部の郭瓊瑩学部長だ。オランダではどの家もコチョウランを飾っているが、コチョウラン育種王国の台湾では家に花を飾る人は少ない。
今回の国際的な博覧会を通して、国民が花に興味を持ち、花を飾ったり育てたりすることが人々の生活の一部になれば、花の「美のパワー」が社会に浸透していくことだろう。
台北花博は、世界的な園芸花卉業界組織であるAIPH(国際園芸家協会)に認定された国際園芸博覧会である。
この博覧会がアジアで開催されるのは7回目。AIPHは博覧会の会期の長さや海外からの出展の数などによって花博を4レベルに分けているが、台北花博は会期が最も長く、年に1回までしか開催されない最高レベルの博覧会に認定されている。
台北花博の総執行長を兼務する台北市産業発展局長の陳雄文が挙げる台北花博の特色は以下の通り。
1.すべてが台湾製であること。計画から設計、施工、展示、運営まですべて台湾の手で行なわれている。これによって、ハード面の施工能力と台湾の文化や創意といったソフトパワーを世界に示している。
2.都心で開催されていること。これまでの花博の多くは郊外や田園地帯で開催されてきたが、台湾では都市中心部の早くから開発された地域で開催し、これと同時に都市再開発の目的も達成しようとしている。会場が河畔(基隆河)にあるという点も初めてだ。
3.台北花博は初めて先端技術を取り入れた国際園芸博覧会である。最先端のIT技術を駆使して花というテーマを扱っており、AIPHの主席も、これは今後十年の博覧会の手本となると述べている。
4.パビリオンは第1級に属し、新生公園エリアの3つのパビリオンの他、舞蝶館や風味館などは永続的に利用できる。
5.台北花博会場には安全のためのフェンスを設けていない。これは主催機関が住民の自治能力を信頼しているからで、現在までのところ花や施設の損傷も少ない。「台湾の一般市民は信頼に値します」と陳雄文は自信を持って語る。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。

生き物である草花にはそれぞれ生長に必要な過程と時間があり、無理に生長を早めることはできない。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。

円山公園エリアの入り口に弧を描いて立つ台湾最大のグリーンウォール。

1月に満開の状態で展示するために、福埠実業では3か月前から50品種のチューリップを媒質に植えて冷蔵してある。写真はフリンジのあるハミルトンという品種。

押されたりぶつかったりしないよう、花卉の輸送には特殊なラックと包装が用いられる。写真は福埠実業が清境農場から花を出荷する様子。

花はいつかは萎れてしまうが、蝶は花を求め続ける。台北花博は台湾の花の世界に新しい物語をもたらした。

台北花博を彩る美しい花々カルセオラリア(キンチャクソウロイヤル・トリニティマリーゴールドジニアオステオスペルマムマーガレット。

生き物である草花にはそれぞれ生長に必要な過程と時間があり、無理に生長を早めることはできない。

エリア間を結ぶ「花のトンネル」。写真は美術公園エリアと新生公園エリアをつなぐ「光影森活」、植物の間から差し込む日差しが心地よい。


台北花博の四大エリア