映写技師の優れた技術
1本の映画フィルムは数本のリールに巻かれているため、上映時には映写機を2台用意して1本目の映写が終わると同時に2本目を回さなければならない。映写技師は、リールを取り付けてボタンを押すだけの簡単な仕事だと思っている人も多いが、技師は常にスクリーンと機械から目を離せない。
例えば、光源のカーボンアークランプは電極間の放電によって発光するもので、使い続けると炭素棒が短くなっていくため、映写技師は常に電極間の距離に注意しなければならない。放っておくと瞬時に光が弱まってしまうのだ。また、フィルムが切れたりした時は、すぐに映写機を止めて、もう一台の映写機に切り替える。停止したフィルムに光が当たり続けると高温になって燃えてしまうのである。
映画フィルムは配給会社から借りる。映画1本のレンタル料は3日で10万元近くするため、何人かの映写技師が資金を出しあって協同で借り、交換しながら上映していた。だが、デジタルの時代になり、1回3~4万元だった上映料金は2500元まで下落してしまった。映画フィルムそのものも少なくなったので、高祥晴は手元のフィルムを買い取り、コレクションとして保管している。
一般に映画は撮影が終了すると、多数の複製が作られる。マスターフィルムから最初の複製が作られ、編集を経たフィルムができ、さらに音響を加えたものができる。封切り用のフィルムから最後の野外上映まで回ってくる間に、6回ほどの複製が重ねられているため、フィルムの質は封切り時のものほどは良くない。そこで、フィルムの保存が非常に重要な仕事になる。上映が終わるたびに、彼らはリールの上に新しい新聞紙を被せる。今はフィルム映画の上映機会は少ないが、高祥晴はしばしばフィルムの状態をチェックしている。映画フィルムはすでに希少なので、あまり上映せずに保管しておいた方がいいという人もいる。確かに上映すればフィルムは引っ張られ、摩耗するのだが、一方で温度が上がってフィルムの湿気を払うこともできる。また高祥晴は、フィルムは上映してこそ価値があると考えている。
映画フィルムは熱と水に弱い。特に映写機を動かし始めて最初の5分は、瞬間的摩擦で高温になり、フィルムを傷めてしまう。そこで映写技師は、フィルムの巻頭に5~10分のフィルムを貼りつける。一般の映画館で最初に上映される広告や予告編のようなもので、その内容は映写技師が決める。巻頭だけでなく、巻末にも別のフィルムをつける。その巻末の画面が合図となり、もう一台の映写機をスタートさせるのである。
夕方6時に始まる野外上映会の場合、映写技師は朝9時から準備を開始する。映写機などの機械を梱包し、フィルムを整理して上映会場に向かうと、最初にするのはスクリーンの設置である。安定した位置を探し、3本のロープで支柱を固定してスクリーンをかけるのだが、風の向きや街灯の位置など、映像の質に影響する要素も考慮しなければならないため、1時間ほどかかる。雨模様の時は、映写機が濡れないよう、テントのようにシートを張るなど、さまざまな条件に対応しなければならない。
油差し、炭素棒の長さやレンズの調節など、フィルム映画の上映は 映写技師の長年の経験 が頼りとなる。