ドラマの影響
政府文化部(文化省)は国際旅行展で「文化が導く、私の島嶼アクション」という旅を打ち出した。映画やドラマ10作品を紹介し、そのロケ地を巡る旅を紹介したのである。
今世紀の初めから、アジアで人気のスターを追って日韓や東南アジアのファンが台湾に来るようになった。最近は『我的少女時代(私の少女時代-OUR TIMES-)』『不能説的秘密』『想見你』などの作品も台湾旅行のきっかけになっている。
長年にわたって台湾の深い旅を提唱してきた蚯蚓文化の游智維総経理は「映像作品は、観光客とのコミュニケーションの良好なツールです」と語る。影像作品は数十年後も旅行者の記憶に残っていて、同じロケ地や通りを再び訪れる人もおり、映像作品は幾度も人々を惹きつけ、さらにそれが拡散していく。近年は映像コンテンツ配信サービスが充実して視聴習慣も変わり、映像作品が国境を越えて影響力を発揮するようになった。そこで文化部は幾多の映像作品の中から、視聴者数や地域バランスを考慮して10作品を選び、旅行にローカルの物語を取り入れたのである。
例えば、野球をテーマとすると、馬志翔監督、魏徳聖制作の映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』が思い出される。これは台湾の「嘉義」という町の高校を舞台に、かつて日本人と漢人、原住民族による野球チームが結成され、日本の甲子園に出場するという物語だ。嘉義のランドマークである中央噴水池には、今も当時の投手・呉明捷の銅像が立っている。
日本の宮藤官九郎氏が脚本を担当した映画『一秒先の彼』は、台湾のドラマ『消失的情人節(一秒先の彼女)』をリメイクしたものだ。台湾オリジナル版の物語の舞台は嘉義県の東石と布袋で、主人公の男女が夕日に染まる白水湖寿島を訪れるシーンがあり、これがファンの聖地になっている。またドラマ『斯卡羅(SEQALU:Formosa 1867)』の舞台となった恒春を訪れ、当時の原住民族が言語や文化の隔たりを超えて生きるために和解していった物語に思いを馳せるのもよい。東海岸の花蓮県豊浜の港口集落を訪れれば、『太陽的孩子(太陽の子)』の中で描かれたアミ族による「海稲米」の復活やその文化が理解でき、また美しい太平洋を見ることができる。
これらのシーンを紹介した後、鍾逸寧さんは感慨を込めてこう語った。韓国ドラマを見た台湾人の多くは、韓国かまぼこを食べてみたい、路地裏の屋台で焼酎を飲みながら生のタコを食べてみたいと思うものだ。これと同じように韓国人も『想見你』を見て台湾のマンゴーかき氷を食べたいと思い、また『不能説的秘密』に出てくる赤煉瓦の建物に行ってみたいと思う。これらが旅行の動機になるのである。「アジアの観光客にとって、食は必ず旅行に組み入れる重要な要素です」という。そこでアン・リー監督の映画『飲食男女』や陳玉勲監督の『総舖師(祝宴! シェフ)』を見れば、台湾の食の多様性に触れることができ、この2作品を見てから高雄の内門や台北公館蟾蜍山の眷村を訪れる人もいる。
ひとつひとつのドラマが変わりゆく台湾の姿を伝えており、台湾を知る窓になる。今度は、映像作品を見てから台湾行きの航空券を手に入れ、リアリティとファンタジーを合わせた旅をしてみてはいかがだろう。

コロナ禍が収束し、台湾で本場のタピオカミルクティやマンゴーかき氷を味わいたいと思う近隣諸国の人々が、ノスタルジーの旅をするようになった。

ひとつの映画やドラマが台湾を知るきっかけになる。ドラマ『斯卡羅(SEQALU:Formosa 1867)』の舞台となったのは、昔は「瑯嶠」と呼ばれた恒春だ。(公共テレビ提供)

映画『太陽的孩子(太陽の子)』に描かれた「海稲米」の物語の背景は花蓮県豊浜の港口集落である。(荘坤儒撮影)