翻訳の前提は母語の力
翻訳者になる条件はと問われ、3人とも母語の重要性を強調した。母語である中国語の力をきちんと身につけることが外国語学習の基礎なのである。「翻訳の力を高めたければ、しっかりした母語の力が必要です」と山口雪菜は言う。
陳徳銘も「将来、外国で暮らすことになったとしても、自分の強みは母語です」と言い、プロの通訳‧翻訳者は一定レベルの母語の力を具えていなければならないと言う。
ロバートは、日ごろから作文を練習し、本を読み、相手の文化を理解するようアドバイスする。また、意味の読み取れないところは無理やり訳すのではなく「必ず誰かに聞いてみること」が重要だ。専門分野の文章の場合は、関連する専門用語をきちんと調べるのも基本である。
もちろん外国語能力も高くなければならない。「高い言語能力は通訳‧翻訳の前提条件です」と陳子瑋は言う。翻訳は技巧、言語、哲学、文化などさまざまな面での思考に関わると生徒たちに語りかけ、将来は師範大学翻訳研究所で学ぶこともできる、と同研究所の宣伝もした。
翻訳は芸術
講座の貴賓として登壇した師範大学文学部長の陳秋蘭は「翻訳は一つの仕事であるだけでなく、ある意味ではアートと言えます」と語った。
同大学翻訳研究所の胡宗文所長は「もし別の言語を知らなければ、己の言語を知ることもない」というイギリスの作家オスカー‧ワイルドの言葉を引用し、人々は翻訳を通して各種言語を理解できるが、「最も重要なのは自分を理解できることです」と述べた。
言語は交流のツールである。国籍や肌の色は違っても、翻訳や通訳を通すことで隔たりをなくし、互いを理解して心を通わせることができ、より広い世界に触れられるのである。