忙しい現代社会において、私たちは常日頃、自分のことで精一杯で、歩みを緩めて周囲を見回すゆとりを失いがちだ。しかし、そうした中でも私たちは決して無情なわけではなく、思いやりの心を失ったわけでもない。
個人から家庭、地域、社会まで、人は互いに依存して暮らしており、誰もそこから抜け出して独りで生きていくことはできない。台湾は今年(2018年)、正式に「高齢社会」に仲間入りし、2025年には「超高齢社会」を迎える。この社会の変化を重視しないわけにはいかない。
だが、さいわいなことに、台湾のいたるところで高齢者の生活のために黙々と力を注いでいる人々がいる。このエネルギーは、医療や建築、ソーシャルワーク、デザイン、教育などさまざまな分野に見られ、「思いやり」を行動へと変えて地域社会や地方産業を変えつつある。
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1988年12月28日、「母語を還せ」という大規模なデモ行進が行なわれ、客家運動の先駆けとなった。それから30年にわたり、多くの人の努力の下、当時の客家運動の要求は一つひとつ実現された。今月号では、客家の長老や学者に、台湾の民主化と多様なエスニック包摂への道のりを振り返っていただくとともに、客家文化発展が直面する課題にも目を向ける。同じく台湾の大地との対話というテーマで、今月の「台湾をめぐる」では花蓮のレトロな旅をご紹介する。取材班はかつての植民地時代の日本からの移住者の足跡をたどりながら、自転車でスローな旅を体験した。
日本統治時代から戦後にかけて活躍した台湾文学の大家・葉石濤は、台南の庶民の暮らしと豊かなエネルギーを描き出した。その作品『葫蘆巷春夢——葉石濤短編小説』が台南市文化局の協力の下、多数の言語に翻訳発行されており、先ごろ台湾文学作品として初めてベトナム語に翻訳された。
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台湾の産業エネルギーは常に世界で注目され光を放ってきた。例えば気象情報ビジネス、グリーン・プロダクツ、情報通信産業なども、常に世界の最先端を走っている。
中でも、WITSA(世界情報サービス産業機構)初の女性会長となった邱月香は、2017年に情報産業のオリンピックと言われるWCIT(世界情報技術産業会議)を台湾に招致することに成功し、これを通して台湾のソフト開発やイノベーション、システム統合といったソフトパワーを世界に示した。邱月香はまた、積極的に個人情報保護を推進し、女性の雇用や学習機会の向上にも関心を寄せている。
今月の『光華』をお読みになり、人と人との心の交流に思いを馳せ、また台湾に生まれ育った人々に誇りを感じていただきたい。