本物の海の味
台湾では牡蠣は蚵仔とも呼ばれ、台湾の庶民の美食だ。蚵仔麺線(牡蠣入り素麺)、蚵仔煎(牡蠣入り卵焼き)などは、栄養豊富で親しみのある屋台料理である。かつて嘉義区漁協の総幹事を務めたこともある東石郷の林俊雄・郷長は、台湾は伝統的な養殖を行なっているので、磯の香りが豊かな牡蠣が食べられるのだと語る。
台湾西部の沿海地域では、牡蠣は重要な養殖品目で、主に嘉義県、雲林県、彰化県、台南市、離島の澎湖で養殖が行われている。漁業署の資料によると、台湾の牡蠣の年間生産量は最高で3万トン、近年は1.8万トン、生産高は約39億元だ。嘉義では東石と布袋の生産量が多く、中でも東石が全国で最も多い。嘉義の年間生産量は8521トンで全国の47%を占め、生産高は15億元に達し、量と金額ともに全国トップである。
牡蠣は潮間帯や浅い海の岩礁に生息し、プランクトンを餌とする。養殖業者は、比較的大きめの殻を選び、それを縄で一本につないで海の中にたらすと、それに牡蠣の幼生が付着する。台湾の養殖方法は、海の深さによって、平掛け方式、筏式垂下法、延縄式垂下法などがある。毎年4~10月が牡蠣が最もおいしい季節で、特に中秋節の頃は、バーベキューをする人が多いため需要が最も高くなる。牡蠣の生産地では、「青蚵仔嫂」と呼ばれる女性たちが集まって牡蠣の殻剥きをしている姿がよく見られ、また街のあちこちに牡蠣殻が山積みになっているのが特色だ。
林俊雄によると、牡蠣の養殖の最大の敵は、西南からのモンスーンや台風の起こす波だが、東石の沖には外傘頂洲という天然の砂州があって波を防いでいる。また嘉義には大型の工業エリアがないため水質が良く、水中のプランクトンも豊富だ。これらの条件がそろっていることから、東石では牡蠣の養殖が特に盛んになり、大きな牡蠣が育つようになったのである。
こうして牡蠣の養殖が盛んになった東石郷では、牡蠣の殻剥きは町民総動員で行なわれる。林俊雄によると、牡蠣の殻を剥く小さなナイフひとつで、多くの人が一家を養っているという。特に産地では、一日の殻剥きで少なくとも1000~2000元は稼げるそうだ。
東石郷では、シーズンになると10軒のうち6~7軒は牡蠣殻剥きをしている。女性たちだけでなく、子供たちも幼い頃から見ているため、牡蠣殻剥きが上手だ。東石小学校では、毎年殻剥き競争を行なっており、優勝すると学校を代表して嘉義区漁協が東石魚市場で行なうコンクールに参加できる。近年は、東石の埠頭周辺に「焼き牡蠣ストリート」が形成され、店が軒を連ねて観光客をひきつけている。
だが、近年は輸入牡蠣の数が増加しており、嘉義県では国産の競争力を高めようと力を注いでいる。嘉義県農業処漁業科の張建成科長によると、県は養殖業者にトレーサビリティ制度を取り入れるよう積極的に働きかけている。商品に生産履歴のQRコードをつけることで、東石牡蠣の信頼が高まるからだ。また、従来は牡蠣の殻剥きをする環境が整っていなかったため、嘉義県は5ヶ所に牡蠣殻剥きモデルエリアを設けた。冷房の効いた屋内で殻剥き作業ができ、鮮度を保つために保冷容器に剥き身を入れ、東石の質の高いブランドを打ち出そうとしている。また、県では古くなった筏式垂下法の牡蠣棚を回収し、養殖が環境に影響を及ぼさないようにしている。

「白水湖蚵学家」を経営する陳長花さんは、牡蠣の養殖事業を観光レジャー体験の場へと変え、牡蠣に関する知識を広めている。