創作の舞台を建てる
驫舞劇場の創設当初からのメンバーである陳武康、蘇威嘉、周書毅、楊育鳴、簡華葆は、当時は20代で若くエネルギーに満ち溢れていた。目上の人たちからダンスグループ創設の負担は大きいと忠告されたが、彼らは意志を貫いた。
最初の年は、あちこちに稽古場を借りては練習していた。賃貸契約終了直前の稽古場で練習していた時に不動産屋がやってきた時には、皆で引っ越し業者のふりをして難を逃れたこともある。当時は舞踊創作だけで食べていける環境はなく、団員たちはあちこちでダンスを教えながら生活を維持していた。
だが、こうした苦労も彼らの情熱を失わせることはなかった。彼らは専属の稽古場を手に入れるために家族や友人から借金をして家を借り、建材を買ってきて素人だけで稽古場を作り上げた。こうして最初の稽古場ができた時、一日中自由に使える場が創作者にとっていかに重要であるかが、より明確にになった。思いついた時に、いつでも創作に取り組めるのである。
驫舞劇場は月に一度「混沌身響」プロジェクトを行なっている。驫舞劇場が舞踏家を、卡到音即興楽団が音楽家を招き、双方が初対面の状態でぶつかり合い、ダンサーが身体の本能で音楽演奏に応えるという実験的な試みである。
2016年にスタートしてから、ピアノやバイオリン、電子音楽などさまざまな形式で行ってきた。招かれたダンサーも身体を動かすだけでなく、身体を叩くなどして音を出して音楽に反応し、思いもかけない喜びが生まれる。招かれたダンサーもミュージシャンも観客も、創作エネルギーを満たすことができる場だ。
十数年来、驫舞劇場はアメリカや日本、タイ、イスラエルなどの優秀な人材とコラボし、『半身相』や『両男関係』といった作品を打ち出して、内外から高い評価を得てきた。国境や文化を越えた、あるいはジャンルを越えたぶつかり合いを通して驫舞劇場はダンスへの情熱をもって、その創作の世界へ人々を招き入れている。
陳武康(左)と蘇威嘉(右)は出会って20年余り、香港の林奕華監督と共同で制作した『両男関係』は舞踊を通して深い友情を表現し、高い評価を得た。
驫舞劇場はイスラエルの舞踊家シャイ・タミールと長年にわたって手を組み、数々の作品を生み出してきた。
面立ちも表情もバックグラウンドも似ている陳武康(左)とピチェ・クランチェン(右)は、作品『半身相』の中でともに身体史観を表現する。
ダンスへの情熱から、驫舞劇場は異なるジャンルの人々を招いてともにダンスを楽しんでいる。