恵まれた教育資源
鼻頭小学校の海洋カリキュラムを見てみよう。一学期は北東からの季節風が吹く9月〜10月、二学期は海水も冷たくない5〜6月に、カヤックやスノーケリングなどを行なう。学校の下には有名な海蝕平台があり、屋外授業では海蝕地形やその生物を観察する。ちょうど取材当日は、鼻頭小学校と中華天使児童村が協力して全国の僻遠地域の生徒たちを招いており、東北角特有の海蝕平台を観察した。
その時の解説を担当したのは永和小学校教員を退職した呉海獅である。「こっちを見てください。たくさんの岩が積み重なっていますが、これらはどうして落ちてきたのでしょう」と問いかけると、生徒たちは次々と答える。「長年にわたって波の浸食を受け、上の方の岩が重すぎて落ちてきたんです」と説明する。「今、生徒さんから質問がありました。あの岩から海水が流れ出ているのはなぜか、他の場所はそうではないのに、という質問です。答えられる人はいますか」と問いかける。
呉海獅は砂岩と頁岩の特徴を説明し、二つの異なる石を取り出して生徒たちに実験させる。「この砂岩は粒子が粗いので水に浸すと気泡が出てきますね。頁岩はそうはなりません」なるほど、砂岩には小さな孔がたくさんあって水が浸み込むが、頁岩にはあまり浸み込まないのである。そのため上に砂岩、下に頁岩という地層では、上から降った雨水は砂岩に浸み込み、頁岩との境目から外に流れ出てくるのである。
続いて呉海獅は生徒たちを率いて潮間帯の生物を観察しに行く。「ここは鼻頭角で有名な海蝕平台潮間帯です。まずカニを、次に魚を観察して、その後は自分たちで生物を探して下さい」と言うと、子供たちは興奮して「カニだ!」と声を上げる。「このカニの正式な名前はイボショウジンガニと言い、地元では『白底仔』と呼びます。腹が白いからです」と呉海獅は分かりやすく説明する。「目玉が透明だったら、脱皮したばかり、死んでしまったら目玉は黒くなります」
生徒たちが自分で生き物を探す段では、巻貝の「イボタマビキ」が見つかる。「無理に剥がさないでください。この貝は夜に活動して餌を探します。無理やり剥がすと生息する場所が見つからず、寿命に影響するかもしれません」と説明する。一問一答の中で自然に生命教育が行なわれている。
今回の活動を催した中華天使児童村協会の沈桂美理事長はこう話す。「今回は鼻頭小学校の豊かな自然資源や海洋生態をメインとし、夏休みを利用して全国各地の子供たちに海を知ってもらおうと考えました。海洋大学の学生さんも招いて子供たちの世話をしてもらいました」同協会のボランティアで海星小学校元校長の徐月梅は「台湾の海岸の環境をどう守っていくべきか、経験しなければ分かりません。今日は子供たちを連れてきましたが、次回は保護者も一緒に来ていただこうと思っています」と話す。
海蝕平台での授業の他、近くの鼻頭漁港でも海の知識を学ぶ。漁師やお年寄りから漁船の種類や、潮の満ち引きなどを学ぶ。地元の海鮮料理店も学校の海洋教室で、旬の魚介類の種類や特徴を学ぶことで東北角の海域への理解を深めている。「私たちの学校は特別で、陸上の運動会の他に、海上の運動会もあるのです」と陳玉芳は言う。その話によると、低学年から救命胴衣を着る練習を始め、中学年になると、鼻頭漁港の軟絲公園や近くの龍洞湾海洋公園などでスノーケリングやカヤックなどの練習を始めるという。子供たちの反応はどうだろう。今回の潮間帯カリキュラムに参加した鼻頭小学校4年生の周靖堯さんは「潮間帯で魚やカニを観察するのが好きです。海に近づけるから」と言う。