竹本来の鮮やかな緑を活かす
彼は修士論文のテーマを選ぶ時、主流である木材ではなく、竹材を選んだ。実験室にあった永久標本からインスピレーションを得た彼は、独自に「孟宗竹の青さを保つ技術」を開発した。
その話によると、竹は伐採すると、表面の葉緑素がすぐに分解してしまい、そこに日が当たることによって黄色に変わっていく。そのため現在の竹製品の多くは黄色いのである。
こうした状況に対し、彼は「置き換え作用」という方法を用いて緑色を保つ。3年生の竹材を薬剤を入れた水に入れて加熱し、葉緑素の中のマグネシウムと薬剤中の銅を反応させる。そうして加熱を終えると、銅が再び水の中へ戻っていく。この処理を施すことによって竹の葉緑素の分解を大幅に遅らせることができ、また素材の中に残留することもないためSGS検査にも合格する。
この心惹かれる鮮やかな緑色が、市場では珍しいカトラリーや茶器などの製品に活かされている。従来の古めかしい竹細工に比べると、青竹の色を保つ技術によって、工芸品は自然のままの竹の生命力を感じさせるものとなる。
林群涵さんは伝統工芸の訓練を受けた経験はないものの、素材としての竹を研究してきた専門性と熱意から、次々と竹細工のアイディアを打ち出す。しかし、美しい木目があり、良い香りがする木材の方が竹材より優れているという人も多く、竹材はなかなか注目されない。それでも「竹博士」と呼ばれる彼は、その専門性を活かして竹の良さを最大限に引き出そうとしている。まさに竹の代弁者と言えるのではないだろうか。
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色を保つ処理をした竹で作った茶さじ。棹が四角い「方竹」を使った左の茶さじは、台湾の優良工芸品賞に輝いた。