私立開平高校は、開放的な校風で知られている。パーマをかけようと染めようと自由で、校内では思い思いのファッショナブルなヘアスタイルにお目にかかれる。だが、開平高校は何と言っても調理科のあることで有名だ。ひとたびレストランでの実習となると、生徒たちは調理場に立つにふさわしい髪型にしなければならない。
開平高校の夏校長の考えでは、人にはそれぞれのタイプがあり、外見を重視する人もいれば、どうでもいいと思う人もいる。「服装や髪型をどのように装うかといったことは、誰にも強制してはならず、子供それぞれの違いを尊重しなくてはいけません」という。
こういった考えに基づき、開平高校の校則は次のたったの3条しかない。すなわち、「他者の身体を侵してはならない」「薬物を服用したり販売してはいけない」「他者のプライバシー、財物を侵してはならない」の三つである。
開平で「三大禁令」と呼ばれるこの校則は、絶対に違反してはならない。ほかには、生徒の将来を考慮して、「理由なしに授業を欠席してはならない」「タバコを吸ってはならない」という二つの規定がある。タバコが禁止なのは、開平では健康上の理由ではなく、生徒の前途を考えてのことである。夏校長によれば、調理科の生徒がタバコを吸って味覚を損なっては、将来に影響するからだという。
だが三大禁令にせよ、ほかの規定にせよ、夏校長は、いずれも討論や修正が可能だと言う。このように緩やかな学校の方針に、外部や父兄からは「放任し過ぎ」という批判も聞かれる。
理解不足によるこれらの誤解も、夏校長は甘んじて受ける。生徒が学校内で、あるがままの自分でいられるなら、甘んじて外部の叱責を受けようというのだ。学校は生徒を放任しているのではなく、「関心は寄せるが干渉はしない。これは子供を管理するより5倍は疲れます」と言う。このような理念実践のため、開平高校の教師数は一般の学校の2倍に上る。
開平高校に入ると子供は「悪く」なるのだろうか。
「開放的な環境に初めて置かれた子供は、まるでくつわを解かれた野生馬のようになります。口ごたえはする、髪は染める・・・。でも、これは子供が必ず経験すべき転換過程なのです。大人が辛抱強く、愛情をもって見守れば、子供は次第に変貌を遂げます」と夏校長は説明する。
「自主」には学習が必要であり、成長するには転換を経なければならない。生徒が転換するさまを、夏校長は自らの目で見てきた。
入ってきたばかりは大人しかった一年生が、かつてない自由を経験し、中学では厳しく禁じられていたパーマや染髪を次々と試していく。ところが二年になり、試すだけのことを試してしまうと、再びまた生活も落ち着いてくる。学校や教師との衝突にエネルギーを費やすこともないため、生徒は次第に自分の将来について考え始める。この頃にはすでに教師を信頼し、語り合うことができるほどになっている。
「転換というものは、危険な要素を含んでいるものです。しかし愛情をもって接すれば、99%の子供は無事に変貌を遂げます」と夏校長は語る。
毛虫が蝶になり、おたまじゃくしが蛙になる。そこには必ず苦難やつらさがつきものだ。子供の成長や変貌も同様だと言えよう。

治国は料理の如しと言う。調理科の生徒たちは自由な環境で創意と専門性を発揮する。