台湾山水画の新境地
さらに、作品の風景をより実物に近づけるため、主要な画家の6人は、制作を始める前に歴史博物館の協力を得て5回にわたって台湾一周の写生の旅に出た。写生するとともに写真も撮影し、さらには国防部から提供された空撮写真も参考にしたのである。
こうして実地に考察し、また感情を深め、さらに歴史博物館の専門家の意見も入れてようやく描き込む内容が決定した。下絵は最も若い羅振賢と蔡友の二人が担当した。羅振賢が北部の基隆から描いていき、蔡友は南の鵝鑾鼻から描き始め、二人の絵が中部でつながった。この下絵をさらに顧問となった画家たちが検討しながら修正し、最後に巨匠・張大千のアドバイスを受けた。
水墨画は長い歴史を持つからこそパターン化しやすいものでもある。そのため、実際に生活する風土や環境を観察しなければ、その欠点を抜け出すことはできない。だからこそ、歴史博物館のアシスタント研究員である蔡耀慶は、「寶島長春図巻」は「台湾水墨山水画の変動と統合を内包している」と語るのである。
芸術作品はもともと作者とその土地の環境とのインタラクティブな関係から生まれるものだ。羅振賢によると、この作品に参加した若い世代の画家たちは基礎の力を十分に鍛えており、平時から大量の写生を練習していた。「写生で描いた草稿があればこそ、その時々の暮らしに近い作品が生み出せるのです」と言う。
特に「天人合一」の精神を強調する水墨画においては、創作の内容は客観的な事物を写実的に描くだけでなく、人間の精神と大自然とのつながりをも表現するものだ。「この作品は、建築物や山水を描いた地理的な作品あるだけでなく、それ自体が極めて優れた芸術性を持つのです」と羅振賢は言う。
だからこそ、40年以上前に完成した「寶島長春図巻」は、歴史的意義においても芸術的価値においても、台湾の水墨画家が残した重要な文化遺産であり、大切にしていかなければならないものなのである。

国立歴史博物館の梁永斐館長は、かつて国父紀念館の館長だった時に、複数の絵画の共同制作を推進した経験がある。(林格立撮影)