まず申し上げたいのは、私たちはトラック・ツーに過度の期待は寄せておらず、トラック・ワン、つまり公式の対話こそ最も重要だと考えているという点です。ただ公式対話が行なえない現状で、米国のシンクタンクが情報伝達の役割を果たしてくださるのは喜ばしいことです。現在トラック・ツーの運営も決して順調とは言えませんが、その機能の大小に関わらず、プラスの効果をもたらすものです。トラック・ツーは質も量も形も定まったものではなく、コミュニケーションさえ成立すれば意義があります。例えば、台湾と中国大陸は来年WTO世界貿易機関に加盟しますが、WTOの国際フォーラムとしての性質も、もう一つのコミュニケーションの場になるはずです。
米国のシンクタンクと関わりを持つことの最大の意義は、やはり米国の人材との関係を保つという点にあるでしょう。シンクタンクの人材は直接的、間接的に国の政策に大きな影響をおよぼしているからです。
ワシントンのように各国が外交競争を展開している場で、近年我が国と米国との関係はますます密接なものになり、良い方向に向っているのはうれしいことです。特に、昨年米国の政権が代ってから両国の関係はより積極的なものになりました。これは今年初めに陳総統が米国で受けた礼遇からも見て取ることができます。
陳総統が、昨年ロサンゼルスを経由した時には、国会議員とも会見できないなど、米国の要求は確かに理不尽なものでした。しかし、今年ニューヨークを経由した時には滞在時間も長くなり、国会議員やシンクタンクの学者、地方の首長、企業経営者と会談できました。陳総統の安全や快適さも考慮してあり、日程もオープンなものとなったのは、台湾に対する一つの尊重と言えるでしょう。
民間の頻繁な交流からも両国関係の密接化がうかがえます。2000年の場合、米国と我が国の旅客機の往来は週に274便に達し、双方は100項目以上の協定に合意しましたし、マクドナルドやスターバックスなどの米国系チェーン店の店舗数でも、台湾は世界のトップになりました。
これら民間の交流と政府間の交流がネットを形成し、両国の関係はより確かなものになっており、台米関係は将来的にも後退する可能性はまったくないと考えています。米国と我が国は、ともに民主国家であり、同じ価値観を信仰し、国家運営のあらゆる面が透明化されているので、容易に共通の利益を掌握することができるのです。
申し上げたいのは、我々は米国と中共との関係が発展することは気にしていないという点です。台湾の生存の利益に影響をおよぼさない限り、交流は良いことだと考えています。
我々は台湾海峡両岸の平和を維持し、対話を再開すること、そして軍備拡張競争に陥らないことを願っています。台湾の両岸政策も、平和を維持し、軍備増加に頼らないというもので、経済、文化、教育などの交流を通して関係が改善されることを望んでいます。両岸には戦争の勃発を避ける方法がたくさんあります。中共が台湾に向けたミサイル配備を撤去または減少し、あるいは軍事的脅威を減らせば、私たちも兵器購入を見直すことができるのです。

(左)程建人・駐米代表は、台湾が国際社会に復帰できることを期待している。(中央)かつて我が国のワシントン駐在大使館だった双橡園は、米国との国交断絶以降は非公式の文化交流の場となっている。

(左)程建人・駐米代表は、台湾が国際社会に復帰できることを期待している。(中央)かつて我が国のワシントン駐在大使館だった双橡園は、米国との国交断絶以降は非公式の文化交流の場となっている。