正真正銘の台湾通
ブランダーズ氏はこう話す。ひとつの国に赴任すると、一年目は興奮気味で、常に学習しなければならない。例えば、オフィス付近に自動車販売店があるのだが、そこではしばしば紙銭(冥土で使う紙幣)を燃やしたり、線香を手に自動車の前後を回っている人を見かけた。何かの儀式をしているようだというので、台湾の民間信仰に興味を持ったという。
また、台湾人は常に安全に気を配っていて、あまり冒険的な行動はしないことに気付いた。例えば、多くの海域では水泳が禁止されており、海水浴場でも定められた範囲内でしか泳がない。また救命胴着をつけ、ライフガードもいるので、台湾人は「水」に畏敬の念を抱いていると感じる。
しかしその一方、台湾人は「火」に対してまったく違う態度を示す。例えば、天灯に願い事を書き、火を灯して空に上げる。また、台南の鹽水蜂炮という祭りでは、四方からロケット花火が水平に飛んでくる中に人々は完全武装して立ち、その姿に見ている方が心配になる。「水」を恐れるが、「火」は恐れないというのは台湾人自身が気付いていない民族の習性なのかもしれない。
ベルギー台北弁事処のフェイスブックを開くと、常にブランダーズ処長の訪問先がアップされている。氏は、訪れた台湾各地の印象を次々と語ってくれる。高雄は港湾都市で、港の周辺にある文化施設は非常によくできている。長い歴史を持つ台南も、ブランダーズ氏は幾度も訪れている。台南市は1993年にベルギーのルーヴェン市と姉妹都市になり、昨年(2024年)の台南史400年の祝賀イベントには、ブランダーズ氏がルーヴェン市のムハンマド・リドウアニ市長に同行して参加し、両市の友好を深めた
ブランダーズ処長はまた、桃園市についても語ってくれた。桃園市の拉拉山は美しく、林相が豊かで神木を観賞できる。桃園国際空港は、海外からの旅客が入国する門戸でもある。その桃園には芸術文化関連の施設が多数オープンしている。桃園市立図書館新総館、横山書法芸術館、桃園市児童美術館などだ。昨年の台北国際ブックフェアの後、ベルギー台北弁事処はブックフェアのベルギーパビリオンで展示した書架と書籍をすべて桃園市立図書館に寄贈した。その新総館は同年7月にベルギーコーナーを正式オープンし、数百冊にのぼるベルギーの蔵書を展示するとともに絵本ストーリー講座を開くなどして、ベルギーを知る窓口としての役割を果たしている。
ブランダーズ氏は台湾の食も楽しんでいる。食べ物のえり好みはしないという氏は、臭豆腐も、あまりにも臭いものでなければ食べられると言って笑う。数々の台湾料理の中で、ブランダーズ氏が最も驚いたのがベジタリアン向けの料理だという。台湾の菜食料理は種類が豊富で調理方法も多様で、どこででも食べることができる。これは他の国ではなかなか見られない特色だと氏は見ている。ブランダーズ氏自身はベジタリアンではないが、台湾で菜食料理が大好きになり、一日一食はベジタリアン料理を食べ、自転車にも乗るようになったことで半年で20キロも体重を落とすことができたそうだ。多くの人はダイエットに苦労するが、自分は簡単に痩せられて幸運だと考えている。以前の自分の写真を見ると、まるで別人で、自分の兄のようだと言う。
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台南市とベルギーのルーヴェン市は姉妹都市の関係にあり、同市のムハンマド・リドウアニ市長(前列左から2人目)が台南を訪問した際、ブランダーズ氏(後列一番左)も同行し、両市の友好を深めた。(台南市政府提供)