柯喬然:まずは現地に来ること
インド市場開拓に携わって3年になる柯喬然は、インドのさまざまな状況にも慣れて、悠然と構えている。
かつて、ビクターラケットの製品販売はインドの代理店に任せていたが、なかなか業績が伸びなかった。そうした中、2014年にインドの選挙で政権が交代した時、出張で現地を訪れた彼は、社会全体が自信に満ちていると感じ、台北本社に報告して代理店との契約を終了することにした。「インド市場は巨大で可能性に満ちていますから、自分でやろうと思ったのです」と言う。
こうして柯喬然は単身インドに渡った。「まずはここに来ること、後は戦いながら前進するのです」と言う。家を借り、現地の食べ物を食べ、言語を学び、人々の暮らしを観察した。まずは現地の人々の考え方を理解する必要がある。例えば、家族を大切にするインドでは、家を出て会社の寮に入ることを好まないため、工場の立地は十分に考慮しなければならない。また、現地の税制や電力状況、工場設置にふさわしい地域など、投資に必要な情報は現地にいなければ理解できない。
成功への第一歩は、まず現地で暮らしてみること、次は良いパートナーを探すことだ。柯喬然は以前の代理店でビクターラケットを担当していた営業マネージャーに声をかけ、インド支社に入社してもらった。こうして短期間で、インド全国の市場やバドミントン界と接触し、協力関係を結ぶことができたのである。
インドでも、最大のライバル企業である日本のYONEXとの競争は避けられない。当初、現地のバドミントン協会との契約はYONEXが独占していた。柯喬然は忍耐強く契約更新の時期を待ちながら、各地の協会を説得して回った。現在は3~4の協会のスポンサーを務めることとなり、選手や大会を協賛するなどして、現地の協会にとってもう一つの選択肢となっている。
ビクターラケットは、インド各地のスポーツ用品店にも根を張っている。地域の協会やチームと提携して大会のスポンサーとなり、商品を提供してプロモーションを進める。こうした方法は広範に行なう必要があり、時間もかかるが着実だ。
柯喬然は、2017年の売上は1億ルピーの大台を超えると自信を見せる。だが、ライバル企業はすでに少なくとも30億を売り上げている。それでも柯喬然が現地で3年をかけて開拓しなければ、これほどの業績は上げられなかっただろう。
柯喬然(左から2人目)は単身インドへ渡り、市場開拓に取り組んできた。「まずは現地に来ること、そして戦いながら前進する」というのが彼の戦略だ。ビクター・ラケットは現地のバドミントン協会やチームと協力し、大会協賛やコート建設などを通して地域に浸透しつつある。