制度確立から福祉まで
また、制度や規則を確立することで、村の持続可能な発展につなげようとしている。司馬庫斯の大小さまざまなことを司る村議会は現在9部門に分かれ、観光や教育文化、自然保護などを管理する。一方、村民は個人の能力や興味によって仕事を分配される。現在、村民の8割が協同組合制に加入し、宿泊施設や飲食店での業務、ガイド、農作業などに従事する。協同組合制に加入しない残りの2割は、自分で民宿を経営している。
18年にわたる制度実施で、司馬庫斯は仕事の分配や資源の共同管理を細かく行い、観光業を発展させてきた。おかげで福祉面でも各手当を充実させている。人口流出問題はほかの先住民集落ではよく見られるが、おかげで司馬庫斯ではUターン組が増えている。
例えば協同組合の会員は、どの仕事に従事していても1人2万元の月給を受け取れる。これは2004年と比べると2倍になった。それと同時に、整った福祉制度も住民の安定した生活を保障する。医療や教育の費用も制度によってまかなわれているのだ。「勉強したいと思えば、幼稚園から大学院までいくらでも行けばいいのです。お金の心配は要らないのですから」とラフイ・イチェは言う。福祉手当も増額されている。例えば2歳以下の子供の育児手当は開始時2007年には月1000元だったが、今は4000元だ。
もちろん規律も制度にとっては大切だ。ラフイ・イチェによれば、どう働いても稼ぎは同じだと考える人間がいないわけではないので、ある程度の規則は必要だ。「例えば、仕事中に飲酒すれば年末のボーナスは半減、再犯はさらに減額されます」去年のボーナスは8万元にまで上がっていることを強調したうえで、「飲酒は特に厳しく取り締まります。抜き打ち検査のために2万元の飲酒検知器を購入したほどです」と言う。同様に、教育補助にも適切な管理が必要だ。高校や大学の授業で欠席が多い場合は、手当は中止される。そして勉強の嫌いな子には、村に戻って仕事を手伝うよう勧めている。
台湾では、経済的な理由で子供は作れないという人が増えているが、司馬庫斯ではそうした問題も見られない。この村では、若い夫婦1組に平均3人の子供がいる。村の唯一の小学校である新光小学校司馬庫斯実験分教室は2004年の開設以来、児童数が増え続け、6学年全体で当初の10人から24人に増えた。人口の確保は言語や文化保存の基礎となる。司馬庫斯は協同組合制によって自らの命脈を保っていると言える。
協同組合制に惹かれ、他所からやってきた若い教師もいる。同じくタイヤル族のチワス・ブヤは故郷台中の白蘭集落の小学校で教えていたが、異動願いを出して3年前に司馬庫斯に赴任した。月曜から金曜まで司馬庫斯で暮らす生活だが、「司馬庫斯は他所から来た教師に対する補助が充実していて、家賃、光熱費すべて無料です。ここの住民は団結力があり、文化保存の意識も高いのです。タイヤル文化を教える授業も種類が多く、私も空き時間に生徒と一緒に授業を受けているので、私のタイヤル語はここに来て上達しました」と彼女は言う。