オープンソースの精神
エアボックスはメイカーの作品から発展し、韓国やシンガポール、アメリカにも販売されるようになった。成功のカギは「オープンソース」の精神にある。創作者がプログラムをネット上に公開し、興味のある人はそれを応用し調整することができるシステムだ。こうして空気品質モニタリングが広まっていった。
「エアボックスが出始めた頃、なぜ特許を申請しないのかと多くの人から聞かれました。実は、これは難しい技術ではなく、私が人より先に作っただけなのです。特許を取ったら、これは私だけのシステムとなり、成長することができません。プログラムをオープンにすれば、多くの人がこれを利用し、どんどん広がっていくのです」と語る陳伶志と許武龍にとって、エアボックス‧プロジェクトにおいて最も重要なのは、最終的な成果であって、利益ではないのである。
こうしてエアボックスは商品となったが、Edimaxはオープンの精神を堅持し、今もデータを公開して各界の利用に供している。「メイカーは大量生産できず、学界は研究が中心なので、そこに産業を組み入れることで規模を拡大できます」と許武龍は言う。計画の当初から、コミュニティには社会を変える力はあるが、それだけでは不十分なことを理解していたのである。
「台湾におけるLASSのコミュニティは非常に大きく、メイカーだけでなくさまざまな分野の人が加わり、そこから新しい発想が生まれています」と語る陳伶志は、台湾の現在の大気環境モニタリング分野での成果を評価している。さまざまな部門がこの領域に取り組み、国内には非常に豊富なデータが蓄積されている。台湾は大気環境モニタリングの研究で世界をリードすることができるようになったのである。
Edimaxの応用プログラムEdigreenが台湾全土のエアボックスのデータを示す。緑色の標示は安全範囲内であることを意味する。
Edimaxのエアボックスは世界の注目を集め、韓国やタイの学者も視察に訪れた。
許武龍は「オープンソース」の精神こそ社会の進歩に役立つと考え、ネット上にLASSコミュニティを立ち上げた。(LASS提供)
エアボックスは社会の関心を集め、さまざまな背景の一般市民や専門家が討論に加わるようになった。(LASS提供)