生物にとっての楽園
慈心基金会の孫久恵係長は、ヒシ田の面積を増やせばレンカクの生息地も広がると指摘する。農家の鄭英華さんは使っていない養魚池を20年以上前に所有していたが、慈心基金会などから頼まれてヒシ田に作り変え、有機認証を受けた。今ではヘビやカメ、カエル、タウナギなども見かける多様な生態系を育んでいる。
農家の林丙火さんも、生息地保護を心掛けたヒシ栽培に取り組み、水田の20%の空間を利用して多様な生物のための環境を整える。ヒシ田に生える野草は人よりも背が高く、知らない人には荒れ果てた池にしか見えないが、野生生物にとってはパラダイスなのだと林さんは言う。
最初は林さんも苦労した。「主な収入はスイカの漬物を作って得ていました。それでもあきらめず8年続け、やっとヒシで利益が出るようになりました。最も大切なのは販売経路方面でのサポートです。農家と協力して多くの農産品ブランドを生んでいる林恵珊さんのサポートがあって、『緑色保育』認証マークのついたブランド『菱雉菱』としてスーパーでの販売がかないました。利益が出てこそ、生物のためにと考えてあげられるものです」
林さんは生物の生態を観察するため、六つのエリアにカメラを設置した。あぜにはシロガシラが好んでついばむパパイヤの木を植えており、シロガシラが飛んできてハムシも食べてくれる。
ハムシはヒシ農家にとって最も厄介な害虫だと言える。ヒシの葉を食べてしまうのだ。食われた葉は焦げたように黒くなってしまい、収穫量が少なくとも半分に減ってしまう。
林さんは、ハムシの好きなキダチキンバイも植えている。そんなことをすればハムシが集まってくるのではと心配する人もいるが、実はハムシにとってより美味しいキダチキンバイがあれば、ヒシの葉には害が及びにくいというわけだ。
水田にいるカメもネズミも、ヒシを好んで食べるはずだ。林さんは対策としてカメのためには空心菜を植えているという。「ネズミもスクミリンゴガイを食べてくれるなど、役に立ちます。それに生物の食物連鎖があって、空にはトビやワシがいて水田のヘビを狙っており、ヘビはネズミを食べてくれます。だから水田にいるのは、逃げるのがうまい、特に機敏なネズミだけです」