今回の展覧会の特色は、教育的意義に富み、考古学の成果を知ることが出来る点にあります。そこで企画当初から教育的意義に重点をおき、青少年向けの読物を編集し、マスコミに紹介してもらい、学校の先生方を見学に招待しました。マスコミに取上げられれば、当然評判になります。
しかし展覧会の成功は見学者の数にあるのではなく、いかに研究し、展示会場を設計し、動線を組立て、ガイドやカタログが十分にあるかなどに係っています。言いかえれば、見学者が楽しく何かを学べ、記憶に残せることが重要です。
展覧会には先天的な条件があります。例えばオルセー美術館展には印象派の大家であるセザンヌ、モネ、ルノワール、ゴッホなど、わが国でも知られた画家が多く、当然評判を呼びます。ダビンチ展も同じことです。一回の展覧会として延べ見学者数の世界記録を達成した秦の兵馬俑展にしても、子供でも知っている中国の文物ですから、遠くからでも見にやってこようという気になります。
どうやって展示を企画するのかよく聞かれますが、とくに秘訣はありません。一番大切なのは基礎研究で、世界の博物館の情報を十分に掌握することです。毎年一回開かれる展示企画会議では、高度の芸術性、歴史性、教育性、一般性を持つ展示が考慮されます。通常は大規模な展示となると2年前から準備が必要ですが、今回の文明の黎明展は歴史博物館が企画した人類の十大文明シリーズの一つで、来年はマヤ文明を予定し、その後インド、ギリシャ・ローマと続く予定です。一般の人々が古代文明に親しみ、歴史感覚と世界観を養えればと思います。
こういった大規模な展示以外にも、様々な文化と芸術の展覧を企画しています。例えば去年は「文物を救え、台湾大地震被災地文物研究展」を開催しましたし、もうすぐ王攀元絵画展と上海百年の栄華写真展があり、どれも一見に値します。
民間との協力はさらに重要です。こういった大規模な国際的展覧会は、一般企業の協力がなければ開催は難しいでしょう。一般企業との協力と言っても、展覧会の企画が決ると興味のある企業や機関が自発的に声をかけてきます。一般企業は利益ばかり重視していると思われるでしょうが、そうではありません。大部分の展覧会は普通赤字で、出展費用、保険料など天文学的数字になります。それでもスポンサーになるのはイメージと社会への貢献を考えるからで、それも企業にとっては悪くない方法でしょう。