南北両院の経験を継承
人員の育成や経験の継承という面では、準備期間中の文物の梱包から展示プランまで、北院の職員が実際に行ないながら南院の職員を指導するという形で進められた。文物を南院に輸送し、梱包を開いて陳列するまでの作業を、北院職員が南院職員を指導しながら行ない、このプロセスを通して重要な所蔵品の保存に関する経験が南院に伝えられた。
かつては一面の荒野だった土地に故宮博物院南院が誕生し、これからは毎日1万人に上る入場者を迎えることとなる。2014年2月6日に着工した建築物はわずか3年余りで世界レベルの博物館となった。故宮に勤務して37年になる馮明珠は、この過程を目の当りにし、感慨深いものがあるという。「正直なところ、私も不安でたまりませんでした。特に建築物が完成するまでの間にはさまざまな問題を解決しなければならず、新しい家に引っ越すのと同じで、時間をかけて少しずつ落ち着かせていく必要があります。その一方で非常に興奮したのも事実です。長年の努力がついに形になったのですから、私だけでなく、故宮博物院のすべての同僚が私と同じように興奮し、喜んでいます」と言う。
文化芸術教育の推進
馮明珠は、博物館の核心的機能は教育にあると考えており、故宮南院が地域の教育関係部門や学校と緊密な協力関係を築くことを期待している。「博物館が持つべき機能の中でも、特に教育に重きを置き、台湾南部のあらゆる学校や教育部門と協力して、周辺の雲林、嘉義、台南エリアの子供たちにさまざまな展覧会を見てもらいたいと考えています。それによって文化芸術教育を推進していけば、将来的に台湾南北の真の文化均等が実現することでしょう」
馮明珠は、故宮南院の建物で最も高い位置にある梁に、自ら「金甌永固、玉燭長調」という縁起の良い8文字を刻んだ。これは故宮博物院所蔵の国宝である清の乾隆帝の「金甌永固杯」と「玉燭長調燭台」にちなんだものだ。「金甌永固杯」と「玉燭長調燭台」は清の皇帝一族が元旦に福と平安を願って行なった儀式に用いた一対の道具で、馮明珠はこれに、創立90周年の国立故宮博物院が今後さらに枝を伸ばし、持続的に発展していってほしいという願いを込めたのである。そして故宮南院が現代の博物館としての機能を発揮し、我が国の文化教育に深い影響力を及ぼすことを願っているのである。