サステナビリティを続ける
素材の研究から始めたSTUDIO LIMのトレイは廃棄される木屑を用いているが、その外観からは「廃棄」「中古」「リサイクル」といった言葉は連想できない。棚に並べられた製品は、繊細で美しいのである。
では「サステナビリティ」という概念は、商品にとってプラスに働き、より多くの人が買っていくのだろうか。実はそれほど簡単ではない。「私たちの商品の購入者は、これがサスティナブルであるからではなく美しいから買っていくのです」と林昀廷はサステナビリティという概念を打ち出すことの難しさを語る。聶嘉希も「サステナビリティは私たちのブランドのコアですが、お客さんと話をする時、それは一つの付加的な名詞に過ぎません」と言う。したがって、消費者にサステナビリティを受け入れてもらうためには、商品は醜いものであってはならないのだ。「美しくないものにお金を使う消費者はいませんから」
陳冠百もこう話す。「私はもともとファッション業界出身で、定番スタイルが好きなので、自分自身が好きになれるものをデザインしています。またシーズンに関係なく、流行遅れにもならないものを作っています。そうでないと、みんな着なくなってしまいますから」Story Wearはサステナブルファッションであると同時にブランド品のような質感の高さを目指しているのである。
身の回りのものを振り返り、周囲の人や物や事を一つひとつ大切にしていけば、私たちの消費もより良いものになるのではないだろうか。「まずは物を最後の最後まで使い切ることです」と林昀廷と聶嘉希は言う。二人はサステナブルファッションの将来を楽観視し、消費者には、サステナビリティは個別のブランドの理想ではなく、一つのライフスタイルなのだと知ってもらいたいと考えている。陳冠百は、衣類の廃棄物がなくなり、労働者搾取の問題がなくなることを願って今後も新しい布地を使った衣服は作らないと言う。今やりたいのは、「ゼロ・ウェイスト・ファッション」の理念を広めていくことなのである。
ファッションを愛する陳冠百は、流行遅れにならない定番スタイルをデザインする。
林昀廷(右)と聶嘉希。二人は「サステナビリティ」をブランドのコアとして、ファイバーウッドのファッショナブルな新素材を打ち出した。
廃棄される木材や繊維などを原料とし、硬くて丈夫な小物を作る。数々の実験と苦心の末の成果である。
耐久性のあるファイバーウッドを作るため、STUDIO LIMは伝統の漆器工芸と現代的な製造工程を組み合わせた。
一年生の草本植物で硬いファイバーウッドの板材が生産できるようになり、将来的に森林の伐採を減らすことが可能になった。