完全国産の電子ブックリーダー
読墨は予約販売の形でオリジナルの電子ブックリーダーmooInkを1000台販売した。「当日の夜8時からオンラインで受付を始め、3時間で目標を達成しました」5年にわたる蓄積が一挙に爆発し、オフィスには歓声が湧きあがった。
読墨の電子書籍リーダーは、E Ink Holdings(元太科技)の電子ペーパーを用い、アセンブリはNetronix(振曜)が行なった。台湾メーカーの力の結晶である。「まさにmade in Taiwanです。実はアマゾンのKindleも台湾のメーカーが受託生産していて、台湾には誇るべき高い製造能力があるのです」と龐文真は言う。読墨はオンライン書店で電子書籍を販売するだけでなく、電子ブックリーダーという実体のある商品も販売することとなり、さらなるデジタル読書推進への重要なマイルストーンとなった。
1.5億元の資金から始めた読墨は4年間赤字続きで財務上の圧力と将来の方向性という試練にさらされていた。龐文真は「電子ブックリーダーの製造を発注する時は、手が震えました」と言う。それでも最初の電子ブックリーダーは4000台以上売れ、この道が正しかったことが証明された。
繁体字中国語の優位性
アマゾンのKindle、楽天のKobo Formaなどの電子書籍リーダーと比較した場合、mooInkの強みは繁体字中国語にある。
mooInkは繁体字中国語を読むために、一台で縦書きでも横書きでも読めるようにデザインされている。特に中国語の小説を読む読者にとっては縦書きの方が読書の感覚が味わえるだろう。画面の処理上も、可能な限り紙の本と同じ感覚で読めるように、カギカッコやセミコロン、ダッシュなどの記号を縦書きと横書きで自動的に調整できるよう配慮されている。
また、中国語入力方法が設定されていないというユーザーの反応を受け、2018年には注音符号で入力できるようにした。当時では世界で唯一、中国語入力ができるブックリーダーだった。ユーザーは宋体や楷書体、ゴシック体など6種類から好みの書体を選んで詩や古文、小説などを読むことができる。「私たちはローカル企業なので台湾を理解しており、繁体字中国語の独特の構造や読書の状況、それに華文読者のニーズや習慣をよく理解しています」と、かつて雑誌「数位時代」の編集長だった龐文真は言う。
紙の本と違い、電子ブックリーダーではブルートゥースを利用することで、手を使ってページをめくる必要がなくなり、食事をしながらでも軽くタップするだけで読み進めることができる。さらに大きなメリットは、注釈を見たい時に巻末まで移動する必要がなく、タップするだけで画面に注釈が出てくる点であろう。
電子書籍リーダーを使えば、マーカーを引いたり、検索したり、メモを取ったり、さらに文章をそのままSNSでシェアしたりすることもできる。また、誤字脱字を見つけたり、レイアウト上の問題を感じたりした時には、直接AIを通して編集部に連絡でき、ユーザーも常に最新のバージョンを読むことができる。
mooInkのファンの一人で、SNSの読書グループ「出版負け組の愚痴」を運営する大澤は「私は書棚ごと本を買う習慣があるんですが、mooInkを使うことで本棚全体を小さなデバイスに収めることができました」と言う。
中文電子書商。 台湾最大の繁体字中国語電子ブックストア、読墨(Readmoo)のサイトでは13万点の繁体字書籍を扱っている。