考え抜いた「体験の時間」
店内の繊細な作品はすべてMacがデザインしたものだ。5年前まで電子関係の企業のサラリーマンだった彼は、機械について学んだことはなく、ただ手で何かを作るのが好きだったという。自分の興味と教育という理想を実現するため、同じ理想を持つ喬安と一緒に店を開くことにした。彼らにとって手作りは自己表現の手段であり、世の中の期待に束縛されず、「より良い自分」になれるものだという。
「私たちの商品は体験です」と喬安は言う。Fun-Makerは消費者に創作に取り組む時間を提供する場で、目標は作品を完成させることではない。その体験のために、店内の飾りつけやお茶、身につけるエプロンなども丹念にデザインされており、家にいるような気分にさせる。喬安はお客のニーズも観察する。一人で楽しみたい人もいれば、おしゃべりしたい人もいて、状況を見ながら対応を変えていく。こうした繊細さが消費者の心をつかみ、香港からのリピーターは、二度目に訪れた時に「ここのお茶とあなたたちが懐かしくて」と言ってくれたそうだ。
一度に8人が作業できるFun-Makerだが、お客が一人でやりたいという時はその要望に応える。中には毎年誕生日に一人で予約する人もいて、自分へのプレゼントを作るという大切な時間を静かに過ごせるようにしている。
ここではテーマの範囲内で自分が作りたいオリジナルの木製品を作ることができる。ある時は、軍の女性士官が米国での訓練に発つ前に来て、米国の友人との交流のためにウィンチェスター・ライフルとP90サブマシンガンを作っていった。また離島の蘭嶼で雑貨店を営む女性は、まもなく島にコンビニが出来ると商売に大きく影響するというので、レーザーカット技術を学びに来て、蘭嶼の土産になる木製品を作っていった。
このように一人ひとりの理由やニーズは異なるが、「どの人もここへ来ると子供に返る」と喬安は笑う。Macの設計には魔力があり、店に入ってきた人はみな子供の心を取り戻す。大学教授でさえ、人目も気にせず、子供向けの回路教室に来たがったそうだ。小型のスピーカーを手作りしたいためである。
繊細なデザインのライト「転動台湾、点亮未来」は、蔡英文総統のオフィスにもある。