2014年末に、中華民国駐在のバチカン使節と故宮博物院は、バチカンの重要文物の台湾における展示可能性を協議していた。

史上前例のない文物展示計画ということで、どの機関も経験はないし、展示する所蔵品の具体的な数も確定していなかったにも関わらず、展示企画が決定されていったのは、過去の文化交流を通じて積み上げてきた両者の良好な経験があったからである。

中華民国駐在バチカン使節のイヴァン･サントス二等書記官こそ、バチカンと故宮の間を奔走し、開催を実現した重要人物の一人である。

今回の展覧会実現のために奔走した教皇庁のイヴァン･サントス台湾駐在二等書記官は、我が国の外交部と故宮博物院の協力によって展覧会が順調に開催できたことに感謝している。

教皇庁の全面的協力

台北に派遣されて4年になる書記官は、台湾を熱愛し東洋文化に傾倒していて、しばしば故宮を訪れていた。一つの国や都市を理解するには、文化や歴史を内包する現地の博物館と教会を訪れるのが最善の方法と彼は考えている。しかも、世界に知られた台湾の故宮博物院は各時代の多様な文物を擁し、世界各地から多くの観光客が訪れる場である。ここにバチカンの文物を展示できれば、東西文化交流の絶好のチャンスとなると書記官は考えた。

展示企画の過程は容易なものではなかった。サントス自身も、バチカンの聖器室には一度しか入ったことがなく「2004年に一度、ごく一部を目にしただけです」と、バチカンでの修行時代を思い起こす。カトリックの歴史に詳しいサントスは、歴代教皇の使用した祭儀用聖器を勉強してはいたが、今回の企画で初めて教皇が使用した聖器を目の当たりにして深く感動したという。

「歴史的な教皇の聖器を目にすると、何とも言えない感動がありました。今回の企画を借りて、文物の歴史的意義を改めて考えることは私にも収穫でした」と語り、さらに「所蔵品の資料整理に力を入れ、歴史的意義を改めて確認できました。翻訳と説明で、見学者にもより理解を深めていただけるでしょう」と言葉を続ける。書記官が最も感動したのは、アジアの文化に関する文物を見いだして、東西文化交流にバチカンが果した実質的意義を証明したことだという。

バチカン文物特別展は、博物館界における今年度の一大イベントである。写真は中華民国のバチカン駐在大使･李世明（前列左から3人目）、故宮博物院院長の馮明珠（前列右から4人目）、バチカン中華民国駐在大使館パウロ･ラッセル代理大使（前列左から4人目）、イヴァン･サントス二等書記官（前列右から2人目）。（故宮博物院提供）

的確な中国語解説

今回の展示品には、ピウス11世が着用した祭服のケープとストラ、ヨハネ･パウロ2世が用いた行列用十字架、三重冠と、中国様式のカズラ、教皇専用の白い円形の帽子と靴、ベネディクト16世が使った緑色のケープ、教皇の最高権威を象徴する漁師の指輪、ロザリオ、現在のフランシスコ教皇がミサを行うときに身に着けるケープとストラなど、どれもサントス二等書記官とバチカンの担当者が精選した逸品の宝物である。

展示企画の煩雑な過程を通じ、カトリック台湾地域司教団儀礼委員会の事務長･潘家駿神父は敬虔な思いを込めて、展示品が意味する儀式の神学的内容を6つのテーマにまとめることに力を尽くした。こうして見学者はカトリックの歴史とミサに用いられる器物の由来をより深く理解できるようになる。

潘神父は「多くの国から儀式の専門家が台湾に見学に来る予定です。この展示には豊かな歴史的価値が集約されているので、信徒であるかどうかを問わず、わかりやすく理解できるように、解説の中国語翻訳には特に注意を払いました」と話す。故宮のガイドスタッフに対しては、教会が事前に教育課程を開設し、さらに百名に上る解説員を育成し、故宮を訪れる見学者がわかりやすく文物を説明できるようにしている。

バチカンの聖器室を訪れた我が国のバチカン駐在大使･李世明（右から2人目）。ネストル神父（一番左）とパオロ･べネディック神父（左から2人目）とともに。（駐バチカン大使館提供）

博物館の年度一大イベント

サントス二等書記官は、今回の展示に関わった各国の協力者に謝意を表し、互いに分け隔てなく力を尽くし、故宮ばかりではなく外交部も全面的な協力を惜しまなかったと感謝する。

バチカン駐在大使の李世明は今回の展示を高く評価し、成功を確信している。外交部はビザ発給から省庁の横の連絡業務を積極的に行い、文物の輸送の重責は中華航空が全面的に協力した。

李世明大使は「展示企画と準備が順調に実施できたのは、バチカンの台湾に対する重視を示しているものです」と言いつつ、これほどの規模の展示となると、準備期間は少なくとも1年以上かかるのに、今回は短期間で完了させるのは容易ではなかったと話す。これもバチカンの中華民国駐在使節、故宮の馮明珠院長および関係各位の努力の賜物である。

今回の「天国の宝物—バチカン文物特別展」には、歴代の教皇が儀式に着用した祭服、ミトラに使用した十字架、聖笏、聖杯などが展示され、歴代の職人の高い技術が見て取れ、さらに荘厳で神聖な宗教的意義を有する。バチカンと故宮が共同で企画した今回の展示は、世界の博物館における年度の一大イベントであり、台湾とバチカンとの文化交流にさらなるページを開くものである。