経済と貧困問題の解決
スピリ:あなたは主要な政見であるユニバーサル‧ベーシック‧インカムを、フリーダム‧ディビデントと呼んでいますが。
ヤン:「フリーダム‧ディビデンド」というのは、すべてのアメリカ国民に一定の収入を保障するという一種の社会保障で、私は毎月1000ドルという額を提案しました。他の社会救済プランと異なるのは、受給者はいかなる条件や審査もクリアする必要はなく、仕事の内容も制限されないという点です。なぜなら、今後12年以内に、アメリカ人の3分の1はテクノロジーの発展によって失業し、しかも新しい雇用は十分には生まれないからです。こうした中で、フリーダム‧ディビデントは社会に安定と繁栄と公平をもたらすことができるでしょう。
スピリ:どのような理念からユニバーサル‧ベーシック‧インカムを打ち出したのですか。
ヤン:私は『The Second Machine Age(第二の機械時代)』『The Rise of the Robots(ロボットの台頭)』『Raising the Floor(最低所得の引き上げ)』などの一連の書籍を読みました。当時、新たな雇用創出のための団体を運営していたので、将来の仕事に関する本ばかり読んでいたのです。「ユニバーサル‧ベーシック‧インカム」というのは実現性の高いソリューションで、この社会に必要だと考えるようになりました。Venture for Americaでの経験を通して、こうした変化は私たちが予想するよりずっと早く発生していて、すでに私たちの周りで起きていると感じるようになりました。
スピリ:働かない人や、働けない人に対して、なぜ多くの人が悪意を抱くのだとお考えですか。
ヤン:これは、早くから私たちの文化に根付いているピューリタン式の仕事観で、やや病態的になっていると思います。私の妻は、今は二人の息子の育児に専念していますが、社会はこれを「仕事」とは認めず、GDPの計算においてもゼロとされます。現在は、さまざまな仕事が統計に組み込まれていません。世の中に必要な仕事であってもです。ですから、より広い視野を持ち、想像力を働かせて仕事というものの意義を考え直す必要があります。
アメリカでは、失業はアルコールや薬物の乱用へとつながりやすいのですが、さまざまな面で、これも直視すべき課題です。例えばトラックの運転手が失業した場合、その人はその後の20年をどう生きればいいのでしょう。想像力のない、乱暴な対応は「他の仕事を与えればいい」というものです。しかし、例えば52歳で背中の痛みや他の病気を持つ元トラック運転手を市場が必要としていない場合、どうすればいいのでしょう。私たちは今までとは違う考えや感覚を持たなければなりません。
スピリ:近い将来、運送業がなくなることはないとしたらどうでしょう。
ヤン:トラックの自動運転化を進めるだけで、年間1680億ドルの利益が得られます。業界では今年からすでに「自動運転タクシー」の配置を開始しており、運輸業の仕事は今まさに消失しつつあるのです。
スピリ:ユニバーサル‧ベーシック‧インカムに反対する人がいるのはなぜでしょうか。
ヤン:現実の生活において私たちは、お金は大切なリソースだと考え、大部分の時間をお金を稼ぐために使っています。そうした中で「私が大統領になったら、すべての人に毎月1000ドルを配布します」と言うと、人々は「そんなことできるわけがない」「経済がめちゃくちゃになってしまう」と退いてしまいます。しかし、それは絶対に違います。アメリカのすべての成人に毎月1000ドルを分配するのは決して困難なことではないのです。さまざまな面で大きなチャレンジですが、人々は精神的、物理的な健康のためにも、もっと自由になり、子供たちの将来のための計画を立て、自分と家族のために投資をするべきなのです。
ロサンゼルスでのキャンペーンで、ユニバーサル・ベーシック・インカムの主張を掲げるヤン。(TPG images/ロイター提供)
ニューハンプシャー州コンコードの高校を訪れ、教職員や生徒とバスケをするヤン。(TPG images/ロイター提供)
カリフォルニアで出会ったヤンの両親はベイエリアを第二の故郷としており、 サンフランシスコは選挙キャンペーンの重点都市となった。(荘坤儒撮影)
アンドリューと妻のエヴェリンと二人の息子。(アンドリュー・ヤン選挙本部提供)