「伐採」で地球を救う
環境意識が高まる中、かつての盗伐者の悪いイメージがあるため、人々は「伐採」という言葉に敏感だ。特に都市部に住む私たちは、天に届きそうな大樹を伐採する林業を、乱伐や斜面崩落と結び付けて考えてしまう。
しかし実際はそうではない。林家鼎は林業地の航空写真を取り出して説明する。伐採したばかりのエリアはすぐに復旧造林を行ない、一年後には緑で覆いつくされる。「鉱石採掘などの『開発』とは違うのです」と言う。
例えば、漁業資源が枯渇している今日、養殖業こそ海洋資源の持続可能な発展に貢献できるとされているのと同じである。人類が木材を必要とする限り、原生林の伐採は避けつつ、積極的かつ計画的に人工林を運営するべきなのである。
台湾では年間の木材需要が600万トンに達するが、自給率は1%にも満たない。環境保全が重視される中、大量の木材を外国から輸入することで、輸送による二酸化炭素排出も増加する。また販売過程で取扱者が幾度も変わり、生産履歴をコントロールすることも難しい。さらには違法伐採の木材が紛れ込むこともある。
こうした経緯から、数年前にはマレーシアの環境保護団体が台湾で抗議活動を行なった。台湾はマレーシア第二の原木輸出先であり、それによって熱帯雨林が破壊されていると訴えたのである。この事件から、台湾人はようやく国内の林業に関心を注ぎ始めた。
しかも、すでに少なからぬ研究データが出されている。樹木には二酸化炭素固定効果があるが、樹齢が高まるとその効果は下がり、若い樹木ほどではなくなる。また、木材使用を控えるために、環境を破壊する石油化学製品を使用するのは本末転倒である。樹木は再生可能な資源であり、伐採後に植樹すれば再び大地は緑に染まる。『孟子』の梁惠王上にもこのような記載がある。「斧斤時を以て山林に入らしめば、材木勝げて用う可からず(伐採にふさわしい時期に斧や斤をもって山林に入れば、材木はどんなに使っても使い切れない)」この道理は今も通じるのである。
そして2017年、林務局は30年ぶりに「国産材元年」として人工林産業振興政策を打ち出した。林務局局長の林華慶は「やらなければおかしいでしょう」と言う。確かに地球市民の一員として責任の一端を担い、「伐採」によって地球を救うことは自然な流れと言える。
しかし、台湾の林業は久しく衰退していたため、人材や技術も途絶えており、市場を開拓して産業を振興するのは容易ではない。
そこで林務局は団体戦の戦略を打ち出した。国有林、私有林、または自治体の公有林にかかわらず、すべて「国産材」の名で集団でマーケティングを行なうことにした。
おがくずを固めたキノコ栽培用の培地は、林業に新しい ビジネスの道を開いた。(左の写真は永在林業提供)