古い家の声を聴く
そのリフォームについて、趙印祥は古い家の声を聴けば、自ずとどうすべきか分かると言う。
まず空間の本来のトーンを取り戻す。内壁の漆喰を剥がして赤レンガに戻し、天井板を取り外して檜の梁を表に出す。窓を開け放して光を取り入れ、窓辺にソファを置き、壁は一面に書棚とする。料理好きなので、一方の壁はオープンキッチンにして食卓兼机のテーブルを置く。
お気に入りの中庭に面した回廊に床板を張り、内外に一体感を持たせた。中庭の1階はトタンの倉庫になっているため、そこにネットを張って青い石を敷き詰め、竹を装飾に植えた。その結果は、まさに庭園である。
何でも自分で作る趙印祥は、家具もランプも手作りする。近隣の太原路には各種材料問屋が並んでいるので、これを改造すれば費用も掛からない。収納スペースは、簡単なフレームを作ってもらい、引き出しは雑貨店でよく見る卵を入れるプラスチックのバスケットである。
一番のお気に入りは、テーブルの上のシャンデリア風ライトだ。どこで買ったのかとよく聞かれるが、偶然の発想だったという。天井板を取り外すと、梁の1本が損傷のためかH鋼に取り替えられていた。その新旧入り混じる唐突な感じが気に入り、これを利用しようと工場用の天井クレーンをH鋼に組み込み、これに自分のデザインしたシーリングライトを取り付けたものである。
このリフォーム工事は半年をかけ、家具を含めた費用は約60万かかった。経費節約のコツは、固定設備の注文製作を避けること、もちろん自分でも清掃や撤去などの作業を行った。
入居以来、さわやかな風の抜ける中庭で友人との飲み会を開いたり、漆喰壁を利用してプロジェクターで映画の上映会を開いたりと、この部屋は様々なシーンに対応してきた。
室内の一つ一つを作り上げてきたが、将来、結婚して子供ができれば、新しい家が必要となるので、せいぜい数年しか住まないだろうという。それでも持家にこだわらず、賃貸でいいと考えている。賃貸でも自分に合った居住環境へのリフォームは可能で、家主と善意で話し合えばいいことだと考えている。多くの人が下町でよりよい生活を送れることに気づき、若者が住み着くようになれば、古い下町は本当の意味で活性化するのではないかと趙印祥は期待する。
(左・右)建築学科と景観学科の教員や学生が、陽明山に放置されていた古い家屋を、リサイクルした建材を用いて改造し、開放的なアート空間へと変えた。