すべては研磨から
それまで台湾の半導体メーカーは日本から再生ウエハーを仕入れていたため、この成功で輸送費も原価も削減できることとなった。シリコンウエハーが8インチから12インチへと変るにつれ、KINIKもさまざまなサイズに対応してきた。品質も安定していることから、UMC(聯電)や米国のインテル、マイクロン‧テクノロジーからも注文を受け、KINIKはこの分野のリーディングカンパニーとなったのである。
1996年にはCMPパッドの開発が始まった。当時、半導体産業はウエハーのCMP(化学的機械研磨)のためのパッドを必要としており、KINIKに開発を依頼してきたのである。KINIKの開発チームは研究と試験を重ね、2000年にダイヤモンド‧ホイールの技術を用いてCMP工程用のパッドの開発に成功した。この製品の品質は非常に安定しており、2002年にはTSMCから入荷検査免除の認証を取得した。
それまで台湾の半導体メーカーはアメリカの3Mからダイヤモンド‧ホイールを取り寄せていたが、これが台湾で調達できるようになり、大幅なコスト削減につながった。またKINIKは技術者を半導体メーカーに駐在させることで、問題を即座に解決できる体制を整え、顧客との関係もますます緊密なものとなった。
こうした製品は世界を市場とするため、技術開発力が重要になる。KINIKはこれまでに452の特許を申請し、そのうち155件が有効である。謝栄哲によると、特許以外にも、さまざまな製品の製造工程や配合などのノウハウがあり、これらが大きな力になっているという。
「最も重要なのは、グラインディング‧ホイールの基礎があったことです。従来のホイールからダイヤモンド、さらに再生ウエハーやパッドまで、当社には堅固な基礎があります」と副董事長の白文亮は言う。こうしてKINIKは従来型の製造業から半導体産業にまでアップグレードできたのである。
情報管理学の博士号を持つ白文亮は「持続可能な経営を目指す企業は、製品にはライフサイクルがあることを考えなければなりません」と言う。有力商品が成長期‧最盛期に入ると、市場競争が激化し、まもなく価格は下落するため、常に新しい分野を開拓していく必要がある。
20年来、再生ウエハーとCMPパッドは400億を超える生産高をもたらし、この二つの製品で台湾トップ、世界シェアは第2位となった。